医師のこだわり,患者の迷惑

みなさま,こんにちは.

最近ちょっといろいろ頭の中が忙しくて,ブログの更新が遅くなり,楽しみにしていただいている方々には,申し訳ありませんでした.

今日は,医師のこだわりについて考えてみたいと思います.

肝硬変,糖尿病のある患者さんです.
帝大系の病院での出来事です.

糖尿病でインスリン治療を受けていました.
自分では受診できないので,介護者が一生懸命通院を支援して受診していました.
看護師がいない施設に入所しています.

こういう患者さんに向かって,4単位の【持続型インスリン】を毎日朝食前に打つよう強硬に指示するのです.

介護保険では,インスリン投与のための注射は訪問看護でカバーできません.

医療保険でももちろんダメ.
施設側では大変苦心して,なんとか看護師に打ってもらえるよう,頑張っていました.
介護保険からはみ出た部分は,自費になるので,本当に家族も大変な思いをしていました.

ちょっといきさつがあって,この患者さんを診療することになり,驚きました.

まずは,グリコアルブミン(GA)といって,アルブミン(タンパクの一種です)にくっついた糖鎖で糖尿病のコントロール状態を主治医が判断しているのですが.
この方はアルブミンが2台前半しかありません.アルブミンの正常値は4くらいです.
肝硬変ですから,この方は低くなっています.そうすると,アルブミンの寿命が延びて,本当の値よりも高くなってしまうのです.

貧血があるので,HbA1c(ヘモグロビンにくっついた糖鎖をみて糖尿病のコントロールの指標にするものです)が使えないと思ったのでしょうか?
しかし.HbA1cは,赤血球の寿命が短縮するような貧血では低くなりますが,ヘモグロビンが10くらいある状態であてにならないということは,ないように思います.

この場合,GAとHbA1cとどちらが指標としてよいかということを考えることとなります.
わたしは,GAは使いたくないですね.

まあそれはいいのですが.

そもそも腎機能がいいのに,どうして経口糖尿病薬ではなく,1日1回のインスリン投与になっているのか,理解できません.
どうしてもインスリンにしないといけないのは,内因性インスリンがない場合,もしくは腎機能が悪くて経口糖尿病薬の排泄が遅れるため
遷延性低血糖を起こす場合です.
この患者さんは,腎機能正常なので,どうしてインスリン??
しかも.1日1回投与のインスリンを,どうしても朝食前に投与するように施設在宅患者に指示するって
医師の見識を疑いました.

1日1回のタイプは,基本的にはどの時間帯に打っても良いのです.

何もわかっていませんね.
自分の指示で,どれくらいの人たちが困るのか.

そもそも,この患者さん,GAで治療効果を見ているのですが,GAはこの場合高く出るのです.
それを勘案してもしなくても,インスリンで高齢者の管理をするには,行き過ぎた値なので
インスリン自体が必要ではないと私は判断しています.

在宅に進出して,こちら側から病院の医師たちのお振舞をみると
大変驚きます.

医師の皆さん.
医師の指示は,守らないといけません.
なので,もっと考えて出していただけませんか?

まあ.わたしの患者さんになった時点で,そういう指示は見直しさせていただきますが.

先般,専門医の教育システムが新しくなると報道されていますよね.

新しい専門医制度に期待します.
内科学会には,是非,このような困った【内科医】が減るように努力していただきたいものです.
ちなみに,このこまった医師は,内科認定医です.

やっぱり,QOLということをもうちょっと治療方針を立てるときに考えるように,医師を教育してほしいですね.

 

そうでないと,周囲の職種は大変です.

わたしには,どうしてこの医師が,1日1回投与のインスリンを朝食前に投与するように指示するのか判りません.
でも.
こういう話は,何回もきいたことがあります....困ったものですね.

医師はお偉いので.

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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