COVID-19患者の重症化危険因子

COVID-19

COVID-19重症化は、健康な人でも年齢に関係なく起こり得るが、主には高齢者や特定の基礎疾患を持つ成人に多く見られる。また、特定の人口統計学的特徴や臨床検査値の異常も重症化と関連している。

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COVID-19ワクチンの接種は、重症化のリスクを大幅に低減するものである。

疫学的、臨床的、検査的特徴に基づいて、重症化する可能性が高い患者を特定するための予測ツールがいくつか提案されている。しかし、これらのツールを評価した研究のほとんどはバイアスのリスクによって制限されており、臨床管理のための十分な検証は行われていないのが問題である。
以下、COVID-19重症化の危険因子を列挙する。

高齢

SARS-CoV-2は年齢を問わず感染するが、中年以上の成人が最も多く感染し、高齢者は重症化する可能性が高いとされている。COVID-19による入院率は年齢とともに上昇し、20~29歳では1%、50~59歳では4%、80歳以上では18%であったと報告されている。高齢は死亡率の上昇と相関していて、英国での分析では、80歳以上の人の死亡リスクは、50~59歳の人の20倍であった。

米国では、症例の67%は45歳以上で、死亡者の80%は65歳以上であった。また、18歳から34歳の人の割合はわずか5%で、死亡率は2.7%であった。高齢、病的な肥満、高血圧、男性であることが死亡率と関連する因子としてあがっている。

小児や青年における症候性感染は比較的まれである。発症しても通常は軽度であるが、ごく一部は重度で致命的な疾患を経験することもある。

併存疾患

複数の併存疾患や基礎疾患がCOVID-19の重症化(すなわち、感染症による入院、ICUへの入室、挿管や人工呼吸、死亡)と関連している。

重症化はどのような人にも起こりうるが、重症化した患者のほとんどは少なくとも1つの危険因子を持っている。イタリアからの報告では、併存症の平均数は2.7であり、基礎疾患を持たない患者死亡はわずか3/355名であった。

米国からの約30万件のCOVID-19確定症例の分析報告によると、併存疾患が報告されている患者の死亡率は、報告されていない患者に比べて12倍であった。

危険因子:少なくとも1つのメタアナリシスまたはシステマティックレビュー、観察研究、またはケースシリーズにおいて、重度のCOVID-19と関連していた併存疾患

  • 脳血管疾患
  • 特定の基礎疾患を有する小児
  • 慢性腎臓病
  • 慢性肺疾患(COPD、間質性肺疾患、肺塞栓症、肺高血圧症、気管支肺異形成、気管支拡張症、嚢胞性線維症)。
  • 慢性肝疾患(肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、自己免疫性肝炎)
  • 糖尿病(1型および2型)
  • ダウン症
  • 心臓疾患(心不全、冠状動脈疾患、心筋症など)
  • HIV
  • 精神疾患(うつ病を含む気分障害、統合失調症スペクトラム障害)
  • 認知症を含む神経学的疾患
  • 肥満(BMI≧30kg/m2)および過体重(BMI25~29kg/m2)の方:Body mass index = 体重Kg /(身長m)2
  • 妊娠中または最近妊娠した方
  • 喫煙(現在および過去)
  • 鎌状赤血球症またはサラセミア症
  • 固形臓器または血液幹細胞の移植を受けている
  • 物質使用障害:人の脳や行動に影響を及ぼす精神疾患で、合法または非合法の薬物、アルコール、薬などの物質の使用をコントロールできなくなる状態を指す。症状は中程度から重度のものまであり、SUDの中でも最も重度のものが依存症である。
  • 結核
  • コルチコステロイドやその他の免疫抑制剤の使用

危険因子の可能性はあるが、エビデンスレベルは低い(少なくとも1つのメタアナリシスまたはシステマティックレビューにおいて、合併症が重度のCOVID-19と関連していたが、他の研究では異なる結論となっている)。

  • 気管支喘息
  • 高血圧症
  • その他の免疫不全

社会経済的背景と性別

特定の人口統計学的特徴もまた、より重篤な疾患と関連していている。世界中の複数のコホートにおいて、男性は重症患者および死亡者の数が不均衡に多くなっている。

米国や英国では、黒人、ヒスパニック系、南アジア系の人々のCOVID-19による感染や死亡が不均衡に多く、健康の社会的決定要因における根本的な格差が関係していると考えられている。併存疾患や社会経済的地位をコントロールしたいくつかの分析では、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系民族と入院患者におけるCOVID-19の有害な転帰との間に関連性は認められなかった。COVID-19に関連した死亡率の高さは、囚人などの社会経済的に脆弱なグループでも報告されている。国民皆保険で生活保護による医療扶助の制度が整っている日本では、社会経済的に脆弱なグループがそういう制度で守られていることによりこうした研究すら成り立たないのが実情で、そういう意味では非常に成功した医療制度を持つ国が日本なのである。

臨床検査値の異常

特定の臨床検査値の特徴もまた、転帰の悪化と関連している。これらは以下の通りである。

  • リンパ球減少
  • 血小板減少症
  • 肝酵素の上昇
  • 乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇
  • 炎症マーカー(C反応性タンパク質、フェリチンなど)、炎症性サイトカイン(インターロイキン6、TNFαなど)の上昇
  • Dダイマーの上昇(1mcg/mL以上)
  • プロトロンビン時間(PT)の上昇
  • トロポニン上昇
  • クレアチンホスホキナーゼ(CPK)上昇
  • 急性腎障害

観察研究では、特定の微量栄養素、特にビタミンDの欠乏がより重篤な疾患と関連しているが、複数の交絡因子が観察された関連性に影響を与えている可能性が高い。また、微量栄養素の不足を補充することでCOVID-19の転帰が改善するという質の高いエビデンスはない。

ウイルス側の要因

重症の患者は、軽症の患者に比べて呼吸器検体中のウイルスRNAレベルが高いことが報告されているが、呼吸器のウイルスRNA レベルと疾患の重症度との関連性を否定する研究報告もある。血液中のウイルスRNAの検出(ウイルス血症)は、臓器障害(例:肺、心臓、腎臓)、凝固障害、死亡率などの重篤な疾患と関連している。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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