【悲報】限界界隈期待の新型コロナ治療薬「イベルメクチン」大規模研究「効果なし」

COVID-19

コロナウイルスに関する偽情報を広める偽科学者や偽指揮者のイメージ画像

最近日本でも、長尾和宏さん、東京都医師会長の尾崎治夫さん、北村晴男弁護士、倉持仁医師、片山さつき衆議院議員などがイベルメクチンに関してデマを飛ばし、物議をかもしておりますが、そろそろ限界界隈に入れたほうがいいのかもしれません。

イベルメクチンは今から1週間ほど前の8月6日、米国国立衛生研究所(NIH)主催のシンポジウムでランダム化比較試験(RCT)でその効果が否定されたことがすでに報告されています。

イベルメクチンはCOVID-19の最新の治療法とされ、反ワクチン接種グループによって宣伝されているようなのですが、1500人の大規模な患者調査によると、COVID-19には「全く効果がない」とと報告が8月6日になされました。

これがTogether Trialの結論です。

Together Trialは、新型コロナウイルス感染症COVID-19に対するいくつかのワクチン以外の治療法とされるものを、慎重にデザインして臨床試験を行っています。この臨床試験は、カナダのハミルトンにあるマクマスター大学が監修し、ブラジルで実施されています。

イベルメクチンのCOVID-19に対する治療効果が否定された8月6日米国国立衛生研究所(NIH)主催のシンポジウム

試験責任者の一人であるマクマスター大学のEdward Mills氏は、8月6日に開催された米国国立衛生研究所(NIH)主催のシンポジウムで、イベルメクチン投与群の結果を発表しました。

題名:

2021年8月6日 COVID-19の再処方薬による早期治療。The TOGETHER Adaptive Platform Trial(エドワード・ミルズ博士、FRCP

演者:

エドワード・ミルズ博士(FRCP) カナダ・マクマスター大学健康研究方法・エビデンス・インパクト学部教授

テーマ:

COVID-19の早期治療と再処方薬。TOGETHER Adaptive Platform Trial

発表スライド

発表スライドはこちらのリンクから

キーワード:
COVID-19治療、アダプティブ臨床試験、Fluvoxamine、既存薬剤の適応外処方、TOGETHER Trial

キーポイント:

・最も成功している臨床試験には1つの共通点がある。それは、介入方法の変更などの長期的な変更を計画する包括的なマスタープロトコルを持つアダプティブプラットフォーム試験(訳者注:比較的柔軟な臨床試験のデザインで、プロセスを合理化し最適化するために試験の途中で変更が可能となる。アダプティブ臨床試験ともいう。)であるということである。

・パーペチュアル試験(訳者注:治療法が継続的に追加・削除されるこのような試験)は、効果的なアダプティブ輪相試験のキーであり、試験終了時に放棄されるのではなく、迅速かつ効率的に次の試験を開始するために再利用される試験インフラを構築することに重点が置かれています。

・TOGETHER試験は、COVID-19を治療するために再利用される治療法を研究する無作為化アダプティブプラットフォーム試験です。

・TOGETHER試験では、参加者はプラセボ群または再製品化された治療法群のいずれかに無作為に割り付けられました。 特定の既承認薬の適応外処方薬(repurposed therapy)がCOVID-19患者に有意な効果を示さなかった場合、その試験群は中止され、新たな試験群に別の既承認薬の適応外処方薬が導入されました。

多くの治療法がほとんど効果を示しませんでしたが、うつ病に一般的に使用されるSSRIであるFluvoxamineは、COVID-19の治療に適応外投与された際に有望な結果を示しました。

議論のテーマ:

・COVID治療に関する重要なブレークスルーがあった場合、研究が完了し、ジャーナルに受理され、出版されるまで待ってから知見を広めるべきでしょうか?

・Fluvoxamine試験の最終結果はまだ出ていないが、これまでのデータから、この薬の安全性と忍容性には大きな懸念はないと思われる。

TOGETHER早期治療COVID試験の詳細

Together Trialのリンク先はクリックしてご覧ください。原文はリンク先でご確認ください。

HPを翻訳いたします。

COVID-19の世界的な流行が続く中、臨床試験では有効な医薬品による介入は限られており、低・中所得国(LMICs)では大規模なワクチン接種は遠い先の話となっています。入院はすでに世界中の医療システムを圧迫しており、SARS-CoV-2に感染した患者の入院を減らすための治療法を開発する必要性は切実です。病気の初期段階での治療法の必要性は最も高い。軽症から中等症の患者のCOVID-19の重症度を下げるために、いくつかの薬剤が有望であることを示す証拠が急速に出てきている。

TOGETHER試験では、多くの国がワクチンの提供を待っている間にパンデミックを遅らせるために、どの既存薬剤の適応外処方が最も効果的であるかを明らかにしたいと考えています。

すべての施設で同時に、比較データを作成するために協力していきます。本試験のデータは定期的にレビューされ、効果的な治療法があれば迅速に特定してすべての患者さんに提供し、効果のない治療法は中止してより有望な治療法にリソースを再配分することができます。TOGETHER試験チームは、新薬の情報を常にチェックし、有望なものを試験に組み入れていきます。

ポイント:

TOGETHER試験は【中低所得国】が【高価なコロナワクチンを国民に接種するのが無理】だから、【何かしら代用療法はないか】というのがコンセプトだとわかると思います。このため、カナダの大学が企画立案(臨床試験をデザイン)して、ブラジルで臨床試験を行っています。

おや??

大変疑問なのですが、いま、イベルメクチン国民に配れーーーーー(*`Д´)ノ!!! とわめいている人たちにとって要するに日本は【中低所得国】であり、ワクチンを普及させるお金もなければマンパワーもない、ってことでしょうか?? はて????なんか保守崩壊してますね。(苦笑)

TOGETHER試験の概要

臨床試験に興味のない人はここを読み飛ばしてください。試験の適格基準など細かいことをみたい方はこちらをクリック。

    TOGETHER試験インフラの構築

    • – トライアルセンターおよび臨床募集サイトの設立
    • – 委員会および憲章の策定(DSMC、ステアリング、イベント判定など
    • – 治験管理スタッフの育成と維持

     

    TOGETHER試験のデザイン

    • – 適応型無作為化およびその他のアダプティブデザイン機能
    • – 成功または失敗の確率を決定するための縦断的モデリング
    • – 対照患者の共有
    • – 特定のサンプルサイズなし

     

    エリジビリティ(適格性)

    除外基準は割愛します。詳しくは試験HPでご覧ください。

    • 1.18歳以上の患者
    • 2. スクリーニング日から7日以内にCOVID-19に合致する急性の臨床症状を呈し、外来診療を受診した患者スクリーニング日
    • 3. SARS-CoV-2抗原に対する迅速検査が陽性であること
    • 4. ハイリスクの基準を少なくとも 1 つ満たしている。
      • – 糖尿病
      • – 全身性動脈性高血圧症
      • – 症状のある肺疾患
      • – 症候性の喘息患者
      • – 喫煙者
      • – 肥満
      • – 移植患者
      • – ステージIVの慢性腎臓病患者、または透析を受けている患者
      • – 免疫抑制状態
      • – 過去0.5年以内に癌の病歴がある方、または現在癌治療中の方
      • – 年齢が50歳以上の方

    ランダム化

    • – 患者の適格性を審査
    • – インフォームド・コンセントを取得
    • – 介入群とプラセボ群に無作為化
    • – 無作為化は層別化されている。
      • – 試験中の他のアームを考慮して
      • – 臨床現場
      • – 年齢(50歳以上 vs 50歳未満)

     

    主要なアウトカム(評価基準)

    • – COVID-19の臨床的悪化による救急外来受診者数
    • COVID-19の臨床的悪化による緊急入院
    • 救急外来の受診(参加者が6時間以上観察下に置かれたと定義)
    • – COVID-19の進行による入院
    • COVID-19の進行による入院(定義:ウイルス性肺炎の悪化)
    • 無作為化後28日以内に合併症が発生した
    • 無作為化後28日以内の入院

TOGHETHER試験のスキーム

TOGHETHER試験スキーム

この臨床試験は最初はヒドロキシクロロキンと、ロピナビル/リトナビル併用、プラセボの比較がなされ、効果がありませんでした。
アダプティブなのでここで介入が変更され、2020年9月18日にフルボキサミン(SSRI)とメトフォルミン、イベルメクチン、プラセボでランダム化割り付けがされましたが、このうちメトホルミンが治療効果がなく途中で脱落しています。
さらに、2021年4月13日からはフルボキサミン、インターフェロンラムダ、ドザゾシン、イベルメクチン、プラセボの4アームとなっています。

このうち、イベルメクチンが統計解析に必要なサンプル数となったため、イベルメクチンとプラセボで解析した、というのがこの図の意味です。

 

TOGHETHER試験のイベルメクチンのCOVID-19に対する治療効果判定は【効果なし】

これについてはスライドでは報告されておらず、米国国立衛生研究所(NIH)主催のシンポジウムのに記載があります。

After many trial therapies showed little effect, Fluvoxamine, an SSRI commonly used for depression, has shown promising results when repurposed to treat COVID-19.(多くの試験的な治療ではほとんど効果が見られませんでしたが、うつ病によく使われるSSRIであるFluvoxamineがCOVID-19の治療に再利用され、有望な結果が得られました。)

つまり、ここに書かれてあるFluvoxamineだけが現在有望株だということで(これで有効だと結論できるわけではありません)、イベルメクチンについては否定された、という事なのです。

前向き(時系列を将来に向かって行うという意味)ランダム化比較試験が最もエビデンスレベルが高いもので、今までイベルメクチンのCOVID-19に対する高いエビデンスレベル(Ⅰまたは最低Ⅱ)の物がありませんでした。

したがって、世界で初めてのイベルメクチンのCOVID-19の治療効果に対する高いレベルのエビデンスが出てきた、そしてそれは【否定的な】ものだった、という事なのです。

ニュースサイトの報道内容

トラさんの悪口書いているのであまり引用したくないのですが

試験責任者の一人であるマクマスター大学のEdward Mills氏は、8月6日に開催された米国国立衛生研究所主催のシンポジウムで、イベルメクチン投与群の結果を発表した。 私はもう十分に罵倒されましたし、イベルメクチンを使用している他の臨床試験担当者も同様です。この分野で働いている他の人々は、脅迫されたり、家族が脅迫されたり、名誉を傷つけられたりしています。 エドワード・ミルズによると、1,500人の患者のうち、イベルメクチンは、試験結果の目標である、救急室での長期観察や入院を必要とする患者の有無に対して、「全く効果がなかった」とのことです。 「今回の試験では、多くの支持者が期待しているような治療効果は得られませんでした」と述べています。

日本をワクチンが買えないからイベルメクチンなどの代替療法をやらないといけないと思っているそこのあなたへ

gisanddata.maps.arcgis.com/apps/dashboards/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6

こちらは世界のCOVID-19の流行状況やワクチンの普及状況(投与回数)がわかるウェブサイトですが。
本日2021年8月14日の日本の状況をスクショしました。
ワクチン接種回数は1億回を超え、約5000万人の国民が受けた計算となります。

日本の2021年8月14日までのCOVID-19感染者数死亡数ワクチン接種数の推移

こちらをみると、日本政府が頑張ってワクチンをすごい勢いで普及させているのがわかると思います。

したがって、日本は普通にワクチンを普及させてCOVID-19の重症化を予防するのが得策でしょう。

イベルメクチン推進派の問題点

以上のように、イベルメクチンの効果の研究 COVID-19を用いたイベルメクチンの効果に関する研究は失敗に終わりました。

ここからは先ほどのアメリカのニュースサイトを引用いたしましょう。

イベルメクチン陣営には、ワクチン反対派や陰謀論者が多く存在します。彼らは、イベルメクチンの真実が、COVIDワクチンから得られる多額の利益を回収したいと考えている製薬業界のエージェントによって隠蔽されていると主張している。 しかし、問題は、イベルメクチンの支持者が引用した科学的な試験は、彼らの主張を証明するには、あまりにも小規模であったり、文書が不十分であったりすることである。最も顕著な治療効果を示したエジプトでの大規模な試験は、盗用やデータの偽装が指摘され、出版社から取り下げられました。 それにもかかわらず、支持者たちは、必ずしも科学的な言説の基準を守ることなく、自分たちの主張を続けているのです。ミルズ氏はシンポジウムの中で、「COVID治療法の主張を調べている真摯な研究者が、イベルメクチン擁護派からかつてないほどの罵声を浴びせられている」と訴えました。

トランプ大統領がかつて猛烈に推進していた薬をコロナウイルス感染者の治療に使用する前に、より多くの検査が必要だという医師からの警告にもかかわらず、少なくとも13の州がCOVID-19患者の治療のために合計1,000万回以上のマラリア薬を入手しました。

“私は十分に虐待を受けましたし、イベルメクチンを使用している他の臨床試験担当者も同様です” と彼は言いました。「この分野で働いている他の人たちは、脅されたり、その家族が脅されたり、中傷されたりしています」と彼は言いました。 「過去に臨床試験担当者がこのような虐待を受けた状況は考えられません」と彼は付け加えました。「特定の人が受けた虐待は衝撃的なものであるため、このような問題についてお互いに協力し合うシステムを考える必要があります」と述べました。ミルズ氏は、具体的な例は挙げなかったものの、「言いがかり」や「中傷」に言及しました。

ミルズ氏によると、彼のチームが行ったイベルメクチンの試験は、イベルメクチン擁護団体から「控えめすぎて期待した結果が得られない」との苦情を受けて変更されたという。

この試験では当初、今年1月にイベルメクチンを1回投与した場合の結果を検証していましたが、その後、患者の体重1キログラム(約2.2ポンド)ごとに400マイクログラムの薬剤を1日1回、3日間投与することに変更され、最大で90キログラムまでの投与となりました。

半数の被験者にはプラセボ錠が投与されました。ミルズ氏によると、いずれの投与量でも臨床的な結果は検出されなかったという。

ミルズ氏は、イベルメクチン擁護派からのさらなる批判を予想しているかと聞かれ、それは避けられないことだと答えた。「擁護団体は、どんな臨床試験でも批判できるように準備しています。彼らはすでに、有効でよくデザインされた批判的な試験はイベルメクチンが失敗するように仕組まれていると判断しています」

まとめ

イベルメクチンがCOVID-19に対して【効果がない】と結論付けるエビデンスレベルの高い試験結果がすでに8月6日に米国国立衛生研究所(NIH)という日本の厚生省に匹敵する世界最高峰の期間が主催するシンポジウムで報告されており、また、イベルメクチンの効果については細胞実験レベルであり生体内でその濃度を実現するには少なくとも数十倍の投与が必要である、ということは去年の初夏の段階からすでに報告されていました。

これに対して長尾和宏医師がテレビでイベルメクチンが効果があるとぶち上げたのは8月10日です。とんでもなく間が悪いですね(笑)彼は何の検索能力もなく、ただただ自分の思ったことを【俺のエビデンス】として伝えているだけだ、ということがお分かりいただけたと思います。

医学知識がない方々にはご自分でファクトチェックをして、って言っても難しいと思いますので、なるだけ国民の皆さんの理解が進むようわたしも頑張っておりますが、もう連日イベルメクチン狂騒曲で正直、疲弊しております。

どうか、当ブログをお読みになった方々が、周囲の方々に正しい知識をお伝えになり、虚偽の科学情報で国民を扇動しようとするマスコミやテレビを批判的に見る目を養ってくださいますようお願い申し上げます。

また。長尾和宏医師や、倉持仁医師などのような【オレサマが効くと言ったら効くんだ】という感じの医師(昔はよくいましたが最近では少なくなったんですけどね。。。)をなんともできない医療業界の体制について、医師の一人として深くお詫び申しあげます。

姫ファンの医学生研修医専攻医諸君、長尾和宏医師や倉持仁医師を反面教師にするのだ。それしかないっ!!と思ったらまあ結構いい教材ですね。

ちなみに長尾和宏さんのところって臨床研修受け入れ施設にいなっているのですが、こんなところで研修するとエビデンスベースドメディシン(EBM)が身につかないので、まだ柔らかい鉄の段階の研修医や専攻医たちには全くおすすめいたしません。

国民の皆さま、どうか、【限界側】から一人でも多くの皆さまを救い出してください。よろしくお願いいたします。

令和3年8月14日 仲田洋美 拝

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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