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イベルメクチンは新型コロナウイルスSARS-CoV-2に効果があると2020年に流行が始まった当初から言われていて、ツイッターでも熱い論争になっていますが、WHOも推奨しないし、FDAも承認しません。一体なぜなのか?この記事でそういう疑問にお答えします。
本日から希望者には自費診療でイベルメクチン投与できるようにしました。
— 倉持仁 (@kuramochijin) August 2, 2021
ツイッターで倉持医師がイベルメクチンを自費で投与すると言っていますが、その怪しさがこれをみたらわかると思います。
2021年8月4日削除したようなので、スクショを上げておきます。
また、イベルメクチンは疥癬の治療薬ですが、疥癬の治療薬として入手が困難になりつつあると苦情が出ています。大谷さんも前にテレビでステロイド吸入薬がコロナに有効と言ってしまい、本当に喘息のある患者さんが当該ステロイド吸入薬を入手しにくい状況となり大変批判を浴びました(批判した側ですが)。
まず初めに薬の承認される過程を説明します
薬が皆さんに医師から処方されるまでには次の過程を必ず通ります。
新薬の場合
- 1.新薬の候補Aを開発
- 2.動物実験で安全性や効果を確認
- 3.治験第Ⅰ相:健康な少数の成人で薬物を少しずつ増やして(dose escalation test)血中濃度、排せつされる経路などの薬物動態を調べます。
- 4.治験第Ⅱ相:効果を示すと予想される比較的少人数の患者さんで、有効性、有害事象(安全性)、用法容量などを調べます。
- 5.治験第Ⅲ相:多数患者で、有効性、安全性、使い方を標準的薬剤と比較、標準的薬剤がない場合はプラセボと比較。
- 6.薬事審議会で承認
- 7.治験第Ⅳ相:市販後に実際にもっと多数の患者さんに投与した時に安全性や効果がどうかを調べます。
既存薬剤の場合
用法容量が同じで単なる適応拡大の場合は、適応を拡大したい疾患の患者を対象に効果を調べて書類を提出し、薬事審議会で通ればそのまま採用されます。用法容量が同じ場合は、有効性だけ示せばよく、安全性は市販薬なのですでに確立されているからです。
イベルメクチンの場合は
今回の新型コロナウイルスに効果があると実験的に(in vitro)される濃度を生体内で実現しようとすると、現在の用法容量の数倍を投与しないといけないので、新薬と同じ扱いとなり、安全性の確認、つまり治験第Ⅰ相からやり直しとなりますが、そもそも第Ⅰ相で安全性が確認された量がすでにありますので、安全が確認された数倍のdose escalation test自体が、生体に安全に投与されると確認された最大量の数倍を投与することとなり、倫理的に問題があるのではないかと疑わざるを得ません。こうした理由で、治験自体が成立しないのではと考えています。通常の薬剤は安全性が確認された最大量を投与するように第Ⅱ相以降を組みます。
こうした理由でイベルメクチンをCOVID-19に投与することはWHOも推奨しないし、米国のFDAも欧州連合のEMAも認可しません。
まるで陰謀のようにおっしゃる方々がいますが、本当にちょっと調べたらわかることをどうして調べもせず騒ぐのか理解できません。
イベルメクチンについては動物・家畜用の製剤を飲む人も後を絶たず、ミシシッピ州では中毒症状により入院する人がいたり、中毒相談センターへの相談件数が増えていることから、注意喚起もなされています。
SARS-CoV-2新型コロナウイルス対するイベルメクチンの抗ウイルス作用について
in vitro(試験管内)研究では,SARS-CoV-2またはCOVID-19ウイルスを感染させたVero/hSLAM細胞を5 µMのイベルメクチンに48時間暴露したところ、コントロール(対照)と比較してウイルスRNAが5000分の一に減少したことが明らかになりました。
この結果から、イベルメクチンによる処理は48時間以内にほぼすべてのウイルス粒子を効果的に死滅させることがわかりました。
この研究は,COVID-19に対するイベルメクチンの抗ウイルス効果を評価した初めてのもので、イベルメクチンがウイルスタンパク質を宿主細胞の核内に伝達する役割を担うインポリン(IMP)α/β受容体を阻害することにより、抗ウイルス効果を発揮する可能性があると述べています。著者らは、COVID-19の治療におけるイベルメクチンの潜在的な有用性を確認するための臨床試験を提案しました。
イベルメクチンの新型コロナウイルスに対する有効性のエビデンスとその評価
イベルメクチンを臨床試験以外で新型コロナウイルス感染症COVID-19の治療にを使用しないことをWHOが推奨しましたが、それは高品質のデータの裏付けのない他の治療介入(治療方法)と同様です。
また、イベルメクチン派の方々がエビデンスのよりどころとしている論文たちは、イギリスの医学生にその臨床データ捏造が発見されて論文撤回に追い込まれました。
そうとわかると今度はインドのプレプリント論文を頼りにインドでは有効性が証明されているといっていますが、これに関しても臨床試験のデザインや書いてある内容に疑義があり、6か月以上たった今もなお、査読をとおって正式なジャーナルに掲載された形跡がありません。
新型コロナウイルス感染症COVID-19に対するイベルメクチンのエビデンスレベル
COVID-19に対するイベルメクチンのデータは質(エビデンスレベル)が低いものです。
イベルメクチンを評価した16件の試験(重症患者を対象としたものは4件のみ)のメタアナリシスでは、死亡率、侵襲的人工呼吸の必要性、入院期間に対する効果は、試験デザインの限界とイベント数の少なさから、いずれも非常に不確実なものでした。
COVID-19で入院した280名の患者を対象としたレトロスペクティブレビューでは、イベルメクチンの投与は死亡率の低下と関連していましたが、イベルメクチンを投与された患者はコルチコステロイドの投与も受けている可能性が高く、交絡因子が非ランダム化試験の結果に影響を与える可能性がありますので、別の追試験でこうした交絡因子を排除して有効性が確認されない限り、この臨床試験をうのみにして患者さんに投与すべきではないのです。
イベルメクチンはもともと、SARS-CoV-2に対するin vitro(試験管内)の活性に基づいて、治療法としての潜在性が提案されていましたが、過去50年間の利用可能なin vivoおよびin vitroの研究をレビューすることで、イベルメクチンの抗ウイルス効果をまとめたスタディではin vitroの研究で使用された薬物レベルはin vivo(生体)で安全な薬物用量で達成されるレベルをはるかに超えていたのです。
細胞培養におけるイベルメクチンの活性は、多くのウイルスに対するマウス感染モデルでは再現されておらず、イベルメクチンが世界中で入手可能であるにもかかわらず、臨床的にも有効性は証明されていません。これは、イベルメクチンの薬物動態と治療安全域が関係していると考えられます。安全な治療用量におけるイベルメクチンの血中濃度は20〜80ng/mlの範囲ですが、培養細胞におけるSARS-CoV2に対する活性はマイクログラムの範囲です(1マイクロ=1000ナノ)。治療濃度を達成するために投与可能な安全な製剤またはアナログ製剤が導き出されれば、イベルメクチンは広域抗ウイルス剤として有用となるでしょう。
まとめ
イベルメクチンに関する論文たちを引用しながら、なぜWHOがイベルメクチンを臨床試験以外で使用しないよう勧告しているのかをお伝えしてきました。
そんなところに立憲民主党がイベルメワクチン(イベルメクチン?)を使えと国会を開け、みたいにツイートしていたので、反論しました。
イベルメワクチンなどこの世に存在しないものを国会でどうやって通そうと言っているのかこのバカチンどもは?
100歩譲ってイベルメクチンのことだとしても、「in vitro(試験管)の研究で使用された薬物レベルは生体で安全な薬物用量で達成されるレベルをはるかに超えていた」ため却下されてます。 t.co/p5XKM54FNv— 仲田洋美 遺伝専門医【専門医制度周辺調整中】 (@drhiromi) August 1, 2021
そもそも薬事審議は厚生労働省の管轄で、国会でやろうとするの間違ってますよ(笑)
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