新型コロナに対するイベルメクチン|米国とEUの薬事承認機関の声明

COVID-19

米国の薬事承認機関であるFDA

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最近、イベルメクチンががやがやうるさく言われていますが、ついに自民党コロナ対策本部本部長であり、医師である元長崎大学外科助教授富岡勉さん(富岡さんの上司のKまつ先生はわたしのお友達です)が、「使えるものは使うべき。ワクチンの副作用は責任持つと言っているのに、これは何故躊躇するのか。厚労省は寝ているのか」などと発言し、物議をかもしています。

twitter.com/ex_kanryo_mochi/status/1428687225059897349

また、こちらには富岡勉議員が8月18日の内閣委員会において発言する動画がありますので、是非ご覧ください。

ちなみに富岡勉さんは今年11月までには必ずある衆議院の改選には不出馬を表明しています。とんでもない置き土産をしないでもらいたいものです。

日本のていたらくな国会議員たちがこんなバカげた討論を国会議事堂で繰り広げているため、国民の皆様に正しい情報をと思い、この記事では米国とEU(ヨーロッパ連合)の薬事承認機関であるFDAとEMAのイベルメクチンに対するアナウンスを見ていきましょう。

FDAのイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する投与に対する言及内容

米国の薬事承認機関であるFDA

COVID-19の治療や予防にイベルメクチンを使用してはいけない理由
のページで2021年3月5日に言及されています。原文はリンク先でご確認ください。以下、和訳します。

COVID-19。私たちは、時に永遠のように思えるこの病気と共存しています。この病気で死亡した人の数を考えると、一部の消費者が、米国食品医薬品局(FDA)の承認や認可を受けていない、型破りな治療法に目を向けているのも不思議ではないかもしれません。

これは理解できることですが、注意してください。FDAの仕事は、医薬品の科学的データを慎重に評価し、その医薬品が特定の用途に対して安全かつ有効であることを確認した上で、承認するかどうかを決定することです。FDAが承認していないCOVID-19の治療法を使用することは、臨床試験の一環でない限り、重大な損害を引き起こす可能性があります。

COVID-19の治療にイベルメクチンという薬が注目されているようです。イベルメクチンは、米国では動物の寄生虫の治療や予防によく使われています。 FDAは、馬用のイベルメクチンを自己投薬した結果、医療支援が必要となり入院した患者の報告を複数受けています。

イベルメクチンについて知っておくべきことは以下の通りです。

  • ・FDAは、ヒトにおけるCOVID-19の治療または予防のためのイベルメクチンを承認していません。イベルメクチンの錠剤は、いくつかの寄生虫に対して非常に特定の用量で承認されており、アタマジラミや酒さのような皮膚疾患のための局所的な(皮膚上の)製剤があります。イベルメクチンは、抗ウイルス剤(ウイルスを治療する薬)ではありません。
  • ・この薬を大量に服用することは危険であり、深刻な被害を引き起こす可能性があります。
  • ・イベルメクチンの処方箋を持っている場合は、合法的な供給元から入手し、処方箋通りに服用してください。
  • ・動物用の薬を自分に使ってはいけません。動物用のイベルメクチン製剤は、人間用に承認されたものとは大きく異なります。

イベルメクチンとは何か、どのように使用するのか?

  • ・イベルメクチン錠剤は、寄生虫によって引き起こされる2つの症状である、腸内ストロンギロイディ症とオンコセルカ症の治療薬として、FDAによって承認されています。さらに、イベルメクチンの外用剤(皮膚に塗るタイプ)の一部は、アタマジラミなどの外部寄生虫の治療や、酒さなどの皮膚疾患の治療に承認されています。
  • ・イベルメクチンの一部は、動物の心筋梗塞や特定の内部および外部寄生虫の予防に使用されています。これらの製品は人間用のものとは異なり、動物用に処方されたものを使用する場合のみ安全であることに留意する必要があります。

どのような場合にイベルメクチンを服用することが安全でないのでしょうか?

  • ・FDAは、COVID-19の治療または予防のためにイベルメクチンをCOVID-19の患者に使用することを支持するデータを検討していませんが、いくつかの初期研究が進行中です。承認されていない用途で薬を服用することは非常に危険です。これは、イベルメクチンにも言えることです。
  • ・誤った情報が多く、イベルメクチンを大量に摂取しても大丈夫だと聞いたことがあるかもしれません。それは間違いです。
  • ・承認された用途のためのレベルのイベルメクチンであっても、血液凝固剤のような他の薬と相互作用する可能性があります。また、イベルメクチンを過剰摂取すると、吐き気、嘔吐、下痢、低血圧(血圧低下)、アレルギー反応(かゆみやじんましん)、めまい、運動失調(バランスの問題)、痙攣、昏睡、さらには死に至ることもあります。

動物用のイベルメクチン製剤と人間用のイベルメクチン製剤の違い

  • ・動物用のイベルメクチンは、馬や牛などの大型動物に使用されるため、高濃度のものが多い。そのような高濃度の薬は、人間にも強い毒性を示します。
  • ・また、FDAの審査は、有効成分の安全性や有効性だけでなく、非活性成分(添加物)についても行われます。動物性食品に含まれる多くの不活性成分は、人間への使用が評価されていません。あるいは、人に使われるものよりもはるかに多く含まれています。場合によっては、それらの非活性成分がイベルメクチンの体内吸収にどのような影響を与えるかわからないこともあります。

一方、COVID-19の感染拡大を抑制するための効果的な方法は、引き続き、マスクの着用、同居していない人から6フィート以上離れること、頻繁に手を洗うこと、人混みを避けることです。

EMAのイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する投与に対する言及内容

EUの薬事承認機関であるEMA

EMAもまたイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症への投与に対して2021年3月22日に言及しています。そちらを和訳いたします。

EMA、無作為化臨床試験以外でCOVID-19の予防・治療にイベルメクチンを使用しないよう勧告

EMAは、COVID-19の予防および治療へのイベルメクチンの使用に関する最新のエビデンスを検討し、入手可能なデータでは、十分にデザインされた臨床試験以外でのCOVID-19への使用は支持されないと結論付けました。

EUでは、イベルメクチン錠剤が一部の寄生虫感染症の治療に、イベルメクチン皮膚製剤が酒さなどの皮膚疾患の治療に承認されています。また、イベルメクチンは、幅広い動物種の内部および外部寄生虫に対する動物用医薬品としても承認されています。

EUでは、イベルメクチン医薬品はCOVID-19での使用は認可されておらず、EMAはそのような使用の申請を受け取っていません。

イベルメクチンの使用に関する最近のメディア報道や出版物を受けて、EMAは実験室での研究、観察研究、臨床試験、メタアナリシスから得られた最新の公表エビデンスを検討した。実験室での研究では、イベルメクチンがSARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)の複製を阻止できることがわかったが、現在認可されている用量で達成される濃度よりもはるかに高いイベルメクチン濃度が必要であった。臨床試験の結果は様々で、有益性がないとする研究もあれば、有益性があるとする研究もあった。EMAがレビューしたほとんどの研究は小規模なものであり、異なる投与法や併用薬の使用など、さらなる制限がありました。そのためEMAは、現在入手可能なエビデンスでは、臨床試験以外でCOVID-19にイベルメクチンを使用することを支持するには十分ではないと結論付けました。

イベルメクチンは他の適応症で認可されている用量では一般的に良好な忍容性を示しますが、ウイルスに有効な肺内のイベルメクチン濃度を得るために必要とされるはるかに高い用量では、副作用が増加する可能性があります。したがって、承認されている用量よりも高い用量でイベルメクチンを使用した場合の毒性は否定できない。

したがって、EMAは、COVID-19の予防または治療のためにイベルメクチンを使用することは、統制された臨床試験以外では現時点では推奨できないと結論づけています。本製品がCOVID-19の予防・治療に有効かつ安全であるかどうかの結論を出すためには、さらなるデザイン性の高い無作為化試験が必要です。

本EMA公衆衛生声明は、COVID-19の予防および治療におけるイベルメクチンの使用に関する継続的な議論を踏まえ、COVID-19 EMAパンデミックタスクフォース(COVID-ETF)によって承認されています。

まとめ

世界の名だたる薬事承認機関がこうしてイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する投与に関して声明を出しています。

そんななか以下のように報道されています。

厚生労働省の山本史官房審議官は18日の衆院内閣委員会閉会中審査で、新型コロナウイルス感染症の患者を対象にした抗寄生虫薬「イベルメクチン」の使用に関し「治験結果を踏まえ、今後承認申請がされた場合には、優先かつ迅速に審査が行われる」と指摘した。
 同時に「有効性、安全性が確認された治療が、できるだけ早期に実用化し、国民に供給されることを目指して取り組みたい」と述べた。
 自民党の冨岡勉氏が「効果があり副作用が少ない」と積極的活用を求めたのに答えた。

この報道からは、山本史審議官が「イベルメクチン」を「できるだけ早期に実用化し、国民に供給されることを目指して取り組みたい」と述べたわけではないことは想像がつきますが、記事からはまるで山本さんが優先的に審査をして承認すると言っているように読み取れる不思議さがありますね。

上のほうでご案内した動画は富岡勉さんの質問を抜き出したものですが、全部はこちらにあるので、是非ご覧ください。

いずれにせよ、本当にイベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する投与を承認したら、わが国は「フィリピン以下」です。(以前フィリピンも政府高官がフェイスブックでイベルメクチンを承認するみたいに言及して大混乱しましたが、結局承認していません。)薬事承認されたら世界の笑いものとなることは間違いなさそうでしょう。

twitter.com/ex_kanryo_mochi/status/1428708282198155265

ちなみに富岡勉さんは次の選挙にでないようです

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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