日本専門医機構サブスペ頓挫問題の元凶【2】外科のサブスぺ問題

サブスぺシャルティ問題 仲田洋美オフィシャルブログ for medical 日本専門医機構

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みなさま、こんばんわ。
4月1日に

専門医機構のサブスぺ瓦解の原因のほとんどは内科学会と外科学会にあります

と書いて2か月半がたってしまいました。

意外と外科学会愛の強いわたしには外科学会の問題に切り込むこともだいぶためらわれたのですが。
わたしと外科学会の関係は2005年に始まりました。腫瘍内科医として母校で第2外科に招かれたはずのわたしがなぜか外科の専攻コースに載せられてしまい。
1年外科医をしたんですよね。
その流れで麻酔科研修も出されて、麻酔科のほうはわたしの感性に合ってたのですごく頑張って標榜医をもらいました。

わたしは遺伝子とかミクロはすごい得意ですが、マクロがダメな人なので外科医には向いていません。
2012年、勤務先の外科がめちゃくちゃでわたしはよく外科学会にクレームを入れてました。
あとは、2015年の暮れ近くになり、内科学会事務局長(当時)から日本専門医機構がうまくいくよう厚労の雰囲気を探ったり周辺調整する役割を言いつけられたので、外科学会とのやり取りはそれ以来頻繁です。内科学会以上に外科学会とコンタクトを取っています。

2016年に理事長になった渡邊先生はとりわけわたしと仲が良く。
東大ですので、高久史麿日本医学会会長(当時)を筆頭に医学の世界では東大閥は健在ですので、高久先生が可愛がってくれる私はどこに行っても大事にしていただけ、渡邊先生も大変わたしを大事にしてくれました。

なので。どこの学会が一番わたしの心情的に近いかと言うと、実は外科です。しかし。やっぱダメなものは誰がやってもダメということでお伝えしていかないと行かないと思います。

それでは、順番に述べていきたいと思います。

実は仲田洋美は内科学会にサブスぺがこうなることをずいぶん前に伝えていた

外科のサブスぺに乳腺、内分泌・甲状腺が新たに加わったのですが、実は乳腺を加えてくださいとお願いしたのはわたしです。
当時の理事長の渡邊先生に。なぜなら乳癌学会があまりにもバカだからです。バカすぎてコントロールできないので。
頭を下げて2階にしてもらいました。
内分泌と甲状腺については一緒にしてもらいたい、規模的に一つ一つだと無理、ということでまとめてもらいました。

この辺、医道審議会を最終的に通さないといけないので、医道審がダメと言いそうなものは調整が必要です。
内分泌と甲状腺をひとまとめにしたのは、「患者の数」と「求められる専門医の数」のバランスです。
専門医制度は国民のためのものなので、たとえば希少疾患で国に一つ専門医がいる医療機関があればいいなんて専門医は専門医機構で育成するべきではない、と言う考えになるのです。

1.外科はサブスぺ全部連動研修にこだわった

外科は当初、サブスぺ全部を連動研修することにこだわっていました。
サブスペシャルティ領域の在り方に関するワーキンググループの報告のなかに連動研修に関する考え方が掲載されています。

連動研修を行わない領域
① 症状が遷延する場合や、診断後により高い専門性が必要な治療を患者が求めた場合に受診の参考となること
② 主に3次医療圏単位において必要であること
③ 大学における講座はないことが多いが、多くの大学において十分な教育が可能であること
④ 基本領域および連動研修を行い得る領域の能力向上に資すること
○ 実態として基本領域を修了後に研修が行われている領域や、複数の基本領域または連動研修を行い得る領域を横断する領域
などが想定される。

このうち、内分泌・甲状腺については② 主に3次医療圏単位において必要であること に該当すると考えられ、連動研修がふさわしくないという事となります。

外科医は力で押すという特性があります

外科学会は厚生労働省に行き。当時、専門医機構担当だったKさんに直談判しました。どうしたら認めてもらえるのか。

連動研修を行い得る領域
① 初診患者の受療行動を適正化し得ること
② 主に2次医療圏から3次医療圏単位において必要であること
③ 多数の大学における講座の分類に近似していること
④ 一般的な診療を行う上である程度幅広い疾患に対応でき、活躍しうる専門性があること
○ 全ての都道府県で研修が行える体制が整備されていること、一定割合以上の医療機関で標榜されていること、基本領域の研修中に多くの症例を経験できること、基本領域をある程度のボリュームを持った領域に細分化した領域とすること

が適当である。

Kさんは、「全ての都道府県で研修が行える体制が整備されているという状況にない」ことを伝えました。

しかし、これ。わたしたちは、「かぐや姫論法」と言っています。
かぐや姫の要求はどんどんエスカレートするし、実現不可能だからです(笑)お役人言葉ってありますからね。
「ダメぢゃ」という事なのですが。そうは言いたくないからかなわないことを挙げる。

ところが外科は、これを曲解しました。「全ての都道府県で研修が行える体制が整備されているという状況」を実現しさえすれば連動研修を認めてもらえるのだと。

おいおいおい。そもそも各都道府県に1か所教育施設を配置したとしても、「連動研修を行わない領域」の定義の「主に3次医療圏単位において必要であること」に該当してしまうため、「内分泌・甲状腺については連動研修を行わない」という方針は覆りません。

ところが。さすが外科医。こういう緻密な?(あたりまえの)分析作業は誰もやらず 厚労の言質とったジョ\(^o^)/ とウキっとしたのですよね。かわいいっちゃ可愛いんですけどね。外科医って。

2.外科がもう一つこだわったサブスぺ連動更新

現在まで外科学会はサブスぺの更新時に1階である外科学会専門医の更新も自動的に行い、サブスぺ学会に更新料を支払う仕組みでした。
これを踏襲したい、とこれもこだわったんです。
しかし。たとえば5年目で外科専門医をとり、そこから4年(9年目)でサブスぺ専門医を取ると、その次の更新である14年目までの9年間1階の更新がないことになります。
1階の更新要件を5年単位で実行しているほかの学会たちと足並みをそろえてもらいたい。外科学会だけそんな変なことする合理的理由がない。
ということでこれも非難囂々でした。

全体としてサブスぺが決裂した原因の1割が外科で9割は内科学会のせい

外科は連動研修については内分泌・甲状腺をやっとあきらめたみたいです(笑)
ダメだって言ってるのに、しつこいからいけないのよ。しつこい男も女も嫌われる。

大体、厚労の言質取ったなんてあほか。100万年早いのよ。

というわけで。どうやら連動更新のみが残っているみたいですが、こちらもほぼ解決しそうな見込みです。

まったく手間かけさせないでよね。(笑)

でも。外科医って可愛いんですよ。わたしは外科医って基本的には好きです。亡き渡邊先生に会うまでは嫌いでしたが。

まとめ

今日は、皆さんにサブスぺ飛んじゃった元凶外科編をお伝えしました。これからも問題ない範囲で皆さんが知りたいことをお伝えしていきたいと思います。
サブスぺの開始自体は伸びましたが、今年度の症例は無駄になりません。腐らず現場で頑張ってくださいね。よろしくお願いいたします。(^_^ゞ

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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