日本麻酔科学会に対する公開質問状2023/04/05

仲田洋美オフィシャルブログ for medical 日本麻酔科学会

麻酔

みなさま、こんばんわ。
本日、日本麻酔科学会に対して公開質問状を出しました。

内容については下記の通りです。

先般、麻酔科専門医よりこのような内容を受け取りました。
『仲田先生
初めて連絡します。専門医の件で調整されていると拝見しましたので失礼かと思いましたがDMしました。私は麻酔科専門医ですが、子育てしながら何とか更新しました。麻酔科は単一施設で週3働く必要があり、しかも直近に勤務のブランクがあると更新できない仕組みをとられており大変でしたが国民の方に安全な麻酔をという理念にはかなっていると思いましたので何とか頑張りました。しかし3月27日に理事長メッセージが出され学会専門医から機構専門医に移行するにあたり不利益を被る可能性のある会員がスムーズに移行できるような打開策を検討されるとのことでした。Twitter上では出産育児で更新できなかった女性医師達が炎上騒動をおこし、それを麻酔科学会で偉い杏林の萬教授(女性)のお気に入りのU40というTwitter部隊があり上層部に更新、移行を聞き入れるように要望したと聞いています。機構専門医は国民のための資格ではないのでしょうか。匿名で学会に理事長メッセージの「不利益を被る可能性のある会員」というフレーズに関して不利益とは何かお伺いしましたが返事はありません。
問い合わせは萬教授も見られると思いますしお気に入り以外排除するという噂なので怖くて実名では問い合わせできません。現場ではとても熱心な看護師が麻酔まわりの訓練しています、出産育児は国策だ、専門医更新させろと騒いでる女医に迎合している学会、機構が情けないです。』 

この件についてご質問いたします。何通かに分けます。

この件について、問題点(論点)がいくつかあります。
1. 出産は女性がするものですが、育児は男性も行えるものなので、女性だけを専門医更新の際に優遇することの整合性が取れるのか。
2. 1.で整合性が取れるとしても、その後、医局の運営は大丈夫なのか。
3. そもそも麻酔科の専門医制度が週3回は麻酔業務に従事しなければならないとなった背景には、バイト麻酔医の台頭問題があり、バイトだけでは麻酔科専門医を更新させないということが厚生労働省保険局(当時迫井課長)から強く求められ、厚労の求めは週4日以上だったのを麻酔科学会が何とか押し返して3日になっているという歴史があるのであるが、麻酔科学会は団体としてのそういう取り決めを執行部が変わったからと言って無視するのか。

論点1について
出産は女性しかできないが、育児は男女双方で行うものである。一方的に育児を担う立場になるのであれば、それは、夫婦間のパワーバランスの結果である。一般人男性と結婚し、むしろ夫に育児を任せて自分は従前と変わらず仕事をしている女性医師もいる。家庭の事情というのは幾通りもあり、それを学会で斟酌すべきなのかについて疑問が残る。
しかも、麻酔科学会は妊娠出産育児に対して、『出産,育児や病気による長期療養等のやむを得ない事情があれば、週 3日の麻酔科関連業務への従事の条件を少なくとも週 1 日の麻酔科関連業務に従事することを条件に1 年間を限度に免除』している。これすらできなかったとしても、妊娠出産においては暫定措置を設けている。暫定措置は2年間であり、国が定めた育児休暇の期間にも該当する。
たとえば暫定措置を使うのが嫌だとかいう理由で、これ以上のことを『自分の都合でみたせない』からといって、理事に直訴したりして制度を変えようとするのはいかがなものか。男女共同参画は男女ともに参画できる社会を目指すのであり、女性に一方的にアドバンテージを与えるものではないと思料する。もしも、貴会がこうした声を根拠に制度を捻じ曲げるのであれば、それは、今までこの制度で一生懸命頑張って専門医を取得して維持してきたあまたの女性専門医に対する冒とくであると言わざるを得ない。
噂の通り、萬氏が自分の人気取りのためにいちいちの事情に忖度するのであれば、それは、公益社団法人としての執行権の濫用に当たるのではないかという論点が別に出てくると思われるので注意されたい。
とりあえず、貴会に検討してもらいたいのは、『今まで頑張った女性専門医』たちが、『別の人が執行部に直訴したら制度が変わった』ということにより、あんなに頑張ったことが無駄になった、と『精神的苦痛』を理由に損害賠償請求訴訟を機会に対して起こす、という状況になったとき、たえられるのかについてである。わたくしならば、誰かの思い付きでくるくる制度が変わるような団体に所属するのは嫌である。それが専門医制度に絡む内容ならばなおさらである。専門医とは自己研鑽の結果であるので、歯を食いしばって取り、維持するものである。

論点2 1.で整合性が取れるとしても、その後、医局の運営は大丈夫なのか。
について
内科学会で2013年に国連の方々をお招きして男女共同参画事業の一般公開講座があり、その時に専門医部会のメーリングリストが相当荒れた。女性の働きやすい環境を一方的に作ろうと主張する実行委員会に対して、男女平等とは平等に働くことであり女性が楽に働くことではないとする私(仲田)の立場の対立があった。当時、MLで言う勇気のない先生方が私に私信を送り、状況を説明してくれた。
当時起こりつつあった問題は、『妊娠出産育児に対してママ医者に配慮して、パート勤務や時短を認める(6歳未満のお子さんンがいる場合、これ自体は男女雇用機会均等法の定めるところ)と、①未婚の女医が男性医師と同じように働くことを求められ、結果として仕事しかない生活に追い込まれ、出会いがないので縁遠くなるという女性間の不公平を生じていること、②男性も育児に参加したいのに男だから働けと言われて仕事に追われ、家庭を顧みないと妻が出て行ってしまうなどの問題がある』というもので、医局の崩壊に瀕している大学があるとの報告があった。
妊娠出産育児は少子高齢化社会においては、より重視されることは間違いないが、ママさん医師だけを特に保護しようとすると、不公平感を招く。制度というのは何人にも公平であらねばならず、育児中の女医だけを優遇するのはいかがなものか。逆に、親の介護のために麻酔科学会の定めるハードルが超えられない医師たちもいるということは想像に難くないが、こうした人への配慮が全くされていない中、妊娠出産育児を聖域化するのはいかがなものか。
そうした医局はまずもって崩壊していくと内科学会を見てきた経験から予言しておく。

論点3について 
麻酔科学会は公益社団法人という組織であるため、執行部が変わったとしてもほかの団体と取り決めた内容については取り決めを変更しない限り有効であるとみなされるのが社会通念である。
 バイト麻酔医が台頭し、麻酔料どころか外科手術料までもを要求するような「テレクラ麻酔医」(スポット麻酔医)の台頭は、そういう麻酔医しか雇えない一般病院からのクレームが厚生労働省に相次ぐということにつながった。さらに、東大外科出身の迫井保健局医療課長(当時)は、麻酔の東西問題(東日本は手術麻酔しかしない、西日本は救急・集中治療・術前術後管理をすべからく麻酔科が行う)に関してご存知であった。これに加えて、慈恵医大の血管外科大木教授(当時)など心臓血管外科系の声の強い外科医たちから、『麻酔科が言うことを聞かない、仕事をしない、簡単な麻酔は歯科医にやらせて麻酔科の本来業務に集中させろ』と外科学会を巻き込み要望し、自見はなこを外科学会総会で男女共同参画関連講演をさせたりして、迫井・自見・森(当時外科学会理事長)ラインで『歯科医の医科麻酔解禁』実現のために舵を切ったことがある。
 以前、小板橋理事長時代に、『歯科医の医科麻酔解禁』の実現を阻むべく、わたくしが迫井さん、自見さん、日本医師会らに対して述べた意見陳述文書を共有したことがあるので、参考にしてほしい。わたくしはその時、『安全な麻酔などありはしない。自見はなこは盲腸の麻酔を安全と言っているようだが、患者の全身状態により異なるので盲腸の麻酔を馬鹿にすべからず。医療法に定められた医療安全のために邁進するのが厚生労働省の責務なところ、歯科医に医科麻酔を解禁するなど行うのであれば、わたくしは断固厚生労働省と戦う。』と宣言した。これは迫井さんが保険局医療課長から医政局担当の審議官になってからである。
 そのころのもう一つの懸案である、『迫井医療課長時代の要望』として、麻酔科学会には週4日麻酔業務を行っていない医師では麻酔管理料が取れないようにする、などという要望が厚労からなされていたと聞いている。当時の麻酔科の執行部がこれに対して一生懸命交渉していたこともうわさには聞こえており、わたくしも当時、厚労に対しておそらく麻酔科の立場と齟齬がない陳情をした。
 その結果、週3日ということを勝ち取った経緯があり、今更その「週3日」をそのような経緯を無視して反故にするのであれば、まずは麻酔科がそのようなことを企画していることを、わたくしの立場としては厚労にお知らせする義務がある。これに関して、本当にそのようなことを企画しているのかについて、わたくしに返答してもらいたい。
 

以上、5通のメールが届いたと思う(注:麻酔科学会には1000文字しかメールを送れない為)が、順番に目を通し、貴会の態度を返答してもらいたい。
また、麻酔科学会執行部がそれまでの執行部の決めたことを翻すのであれば、なぜそのようなことが決定されてきたのかという経緯を歴史的に紐解き、変えることでどのような問題が発生するのかしないのかなどを検討する、ということを通常は行うべきであるが、そのようなストラテジーも持たないのだとすると、現執行部は「組織」というものを理解していない、「俺様のもの」と私物化しているとしか思えないので、即刻退陣すべきである。
尚、この件に関しては、いろんな方々が疑問に感じていると思われるので、いつか公開する予定であることを申し述べておく。

以上

現在、麻酔科周辺では、またしても森先生(前外科学会理事長、現日本医学会副会長)や自見はな子さんあたりが震源で、歯科医の医科麻酔を解禁しようという流れがあるように聞いています。
森先生は、自見はな子さんの出身校である東海大学医学部の医学部長になってますよね。

外科は、麻酔科をずっと揺さぶり続けています。

そんな環境にあるにもかかわらず、現麻酔科学会執行部は、自分のことしか考えていません。せめて、前執行部が必死で守ったものを崩さずにいてほしいと願うばかりで、皆様にこの情報を公開しました。

国民の皆様も、是非、ご自身の受ける麻酔に関して、こんなことが水面下で起こっている、ということを知ってください。よろしくお願いいたします。

仲田洋美 拝

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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