尊厳死と延命治療~ある認知症患者の子供たちの決定~

  • 2015/08/29

お母さんのそれまでの生き方から,輸液という延命治療を拒否して,欧米型の
「経口摂取できなくなったら自然に死を迎える」という選択をした家族のお話をしましょう.

患者さんは認知症でした.

時折,転んで骨折したりして入院,ということを繰り返して,段々と身体機能が落ちていきます.

ある日,突然殆ど食べなくなりました.

食べたくないの,と子供たちがきくと,うなずきます.

好きそうなものを食べさそうとか飲ませる努力を一生懸命していました.

点滴,ももちろん考慮しました.
経鼻経管栄養も.

しかし.認知症で手が動くので,身体抑制しないと,どちらも行えないでしょう.
抜いてしまいます.
点滴を抜いても,出血するだけなので気が付いて押さえて止血すればいいですが
経鼻経管栄養は,投与している途中で抜いてしまうと,気道に入ってしまい,誤嚥性肺炎を
起こす可能性が高くなりますので大変危険です.

静脈ではない輸液経路として皮下があるのですが...
皮下に輸液といっても,皮下は痛いので,一日に必要な水分を全部補うことは出来ません...

こういうお話をして,どうしますか?と言うことになり.
数日考える,ということになりました.

そして,子供たちが出した結論は,経口摂取してくれるだけしてもらって自然に任せると言うことでした.

食べさそうとすると,嫌がるので,嫌がることはしたくない,ということでした.

それから2週間くらいたって,とても安らかに眠りにつきました.

療養しているお部屋の壁には,2年前の七夕に患者さんが書いた
「絶対死なない」という短冊が.

こんなの書いてたんですね~.いつも違うお部屋で診ていたから,気づかなかったです.
わたしはそういいました.

それをみんなで見て,そういえば,そんなのあったね~,と.
「そんなの無理でしょ?誰もかなえた人はいないのよ.」と,ご遺体を前に,にこやかにお話しをされていました.

終末期の迎え方はいろいろあると思いますが.
やっぱり,点滴チューブや尿路カテーテルがつながれた,「スパゲッティ症候群」よりは
自然な形で,こうして,それまでの生活空間で家族に見守られて穏やかに迎えるっていいな,と思います.

飢餓状態で死を迎えるのは可哀そうではないか,という人たちもいると思います.

しかし,飢餓と脱水は脳内麻薬であるβエンドルフィンやケトン体を増加させて,意識レベルの低下をもたらすため,自然に鎮静されているのです.

もちろん,こうした説明をしても,やっぱり人工栄養してほしいという要望にはお応えします.

大事なのは,受療者側が本当に望んでいることを可能な限り実現することですよね.

 

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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