長尾和宏門田隆将北村晴夫片山さつき論文撤回イベルメクチン狂騒曲

COVID-19

研究不正

みなさま、こんばんわ。

新型コロナウイルスにイベルメクチンが有効ということに医師免許をかけるといった長尾和宏医師、それをすごいとあがめる門田隆将さん、門田さんを擁護する北村晴男さん。論文撤回イベルメクチン狂騒曲について分析いたしましょう。

まだわたしの記事を見ていない方はイベルメクチンがなぜCOVID-19に臨床応用できないのかはこちらをお読みください。

テレビやツイッターで発言する著名人たち

門田隆将さん

「僕(仲田注釈:長尾和宏)が言ってる事が間違っていたら責任取って医者辞めます。この1年半で確信。今はわざわざ重症化するのを待つやり方。早く治療すればそれで終わり。私が診てる人は1人も死んでない」と日本で一番コロナ患者を診てきた長尾和宏医師。真の専門家の叫びを無視し続ける愚かな国。

作家の門田隆将さんがこのように述べていますが、門田さん、何度も私、書き込んでいるのですが、聞く耳ないみたいですね。

北村晴男弁護士

こちらの北村晴男弁護士も、およそ弁護士とは思えない論理を展開しています。

片山さつき衆議院議員

おっとこれは議員だけにびっくりですね。スクショも置いておきましょう。

片山さつきイベルメクチン

イベルメクチンについては何本か記事を書いています。発言すると魔女狩りにあうので黙っている医師たちが多いと思いますが。あえて、わたくし、日本の医療界のひそかな中枢の一角として発言いたします。

イベルメクチンの臨床試験は2本がイギリスの医学生の指摘により撤回された

こちらはイベルメクチンの論文撤回を報じたニュースサイトです。

日本ではあまり報じられていませんが。実はこの発端となったのは英国の医学生です。

しかも、恐ろしいことに医学部の授業の「課題」だったのです。。。

それでは、そちらの記事を翻訳いたしましょう。

ちなみに、「論文撤回」って政治家の発言撤回と同等に考える一般の人も多いでしょうが、科学者にとっては論文撤回は無期懲役~死刑に該当すると思っていただいて結構です。科学の信用を棄損させる行為に関しては非常に厳しい判断となります。

COVID-19患者に対するイベルメクチンのエジプトでの大規模な研究が、盗用の懸念や生データに深刻な問題があるとして撤回されたことを、出版社がMedPage Todayに確認した。

プレプリントサーバー「Research Square」の編集長であるMichele Avissar-Whiting博士は、7月14日に研究が撤回されたことをメールで発表し、「盗用の証拠と研究に関連するデータセットの異常の両方が提示され、どちらも著者が論文の修正版を発行することで合理的に対処することができなかったため」と述べた。

ガーディアン紙によると、Avissar-Whiting氏は、この懸念が最初に提起されたのは、英国の医学生であるJack Lawrence氏であったと述べています。

「ジャックが発見した内容から、このプレプリントの結論が損なわれていると考えられるため、健全な科学としての伝播を阻止するために取り下げが行われました」と述べています。「これは、多くのプレプリントサーバーで採用されている戦略であり、ベストプラクティスガイダンスに従っています」と述べています。

この研究は、世界最大のイベルメクチン試験の一つであり、肯定的な結果で注目を集めた最近の2つのメタアナリシス(Bryantら、Hillら)に含まれています特にHillのレビューは、長年イベルメクチンを推進してきた米国のグループが期待していたものです。

エジプトの研究が取り除かれても、これらのメタアナリシスの肯定的な結論が成り立つのか疑問視する声もあります。

ミネソタ大学のDavid Boulware医学博士(MPH)は、MedPage Todayの取材に対し、ベンハ大学のAhmed Elgazzar医学博士らによるエジプトの400人規模の試験は、Hill reviewに含まれる最大の試験であり、全データの20%を占めていると述べた。

主著者である英国リバプール大学のAndrew Hill博士は、MedPage Todayへの電子メールで、同チームが「Elgazzar試験を削除して分析をやり直す」と述べた。

さらにHill氏は、最近BMC Infectious Diseases誌に掲載されたアルゼンチンでの500人規模の無作為化比較試験も含める予定で、COVID-19患者の入院を防ぐという点でイベルメクチンの効果は認められなかったとしています。また、イベルメクチンを投与された患者は、プラセボを投与された患者に比べて、より早く侵襲的な人工呼吸を必要とすることがわかりました。

※アルゼンチンの臨床試験より訳者追加:平均年齢は42歳(SD±15.5)、症状発現から組み入れまでの期間の中央値は4日(四分位範囲3~6)であった。主要評価項目である入院は、イベルメクチン群では14/250人(5.6%)、プラセボ群では21/251人(8.4%)で満たされた(オッズ比0.65、95%信頼区間0.32-1.31、p=0.227)。入院までの期間は,各群間で統計的な差はなかった。試験登録から侵襲的機械的人工呼吸支援(MVS)までの平均期間は、イベルメクチン群で5.25日(SD±1.71)、プラセボ群で10日(SD±2)であった(p=0.019)。また、ポリメラーゼ連鎖反応検査陰性、安全性などのその他の副次評価項目については、統計的に有意な差は認められなかった。※

「発表された論文では、我々の結果は予備的なものであり、より明確な研究を継続する必要があることを強調しました」とHill氏はメールで述べている。

Boulware氏もHill氏のコメントを支持した。Boulware氏は、Hill氏のコメントに共感し、「メタアナリシスの問題点は、基礎となるデータに依存していることです」とツイートしました。”決定的なデータを得るためには、第3相二重盲検無作為化臨床試験が必要です。” とツイートしています。(Boulware氏は現在、COVID-19外来試験を実施しており、診断後3日以内の患者をイベルメクチン、フルボキサミン、メトホルミン(またはそれらの2つの組み合わせ)、標準治療に無作為に割り振っています)。

Elgazzarの研究は現在オンラインで公開されていませんが、他の出版物ではその主な結果が引用されています。入院中のCOVID-19患者にイベルメクチンを投与した場合、投与しなかった場合に比べて死亡する確率が90%低かった。

しかし、Lawrence氏が医学部の課題としてこの論文を詳しく調べたところ、この結論は崩れ始めた。ガーディアン紙によると、まず、段落全体がプレスリリースやウェブサイトから引用されているという盗用の証拠を見つけました。

また、ローレンスは、オンラインで購入できる生データが、何度も研究内容と矛盾していることを発見しました。オーストラリアのウーロンゴン大学の疫学者であるギデオン・マイヤーオウィッツ・カッツ氏も、Mediumへの投稿でそれらの矛盾点のいくつかを取り上げています。

「例えば、この研究では、倫理的な承認を得て、2020年6月8日に開始したと報告されていますが、著者がプレプリントのウェブサイトにアップロードしたデータファイルでは、COVID-19で死亡した人のうち、研究者が患者の募集を開始した時点で、約1/3がすでに死亡していました」とMeyerowitz-Katz氏は書いています。

「さらに、この前向き無作為化試験に参加した患者全体の約25%が、試験開始前に入院していたようで、これは気が遠くなるような倫理違反か、不正の可能性を示す非常に悪い兆候である」と続けた。

Elgazzar氏は、MedPage Todayのコメント要請に応じなかった。

Boulware氏の研究や、イベルメクチン投与群に約1,500人の患者を登録することを目指している英国のPRINCIPLE外来患者試験など、イベルメクチンに関するより明確な結果が得られるであろう第3相ランダム化比較試験が複数進行中である。

長尾和宏が日本一コロナ患者を診ている、自分の患者は誰も死んでいない、のは本当か?

長尾和宏(軽症略)は、日本一の患者数については言及すべきでしょう。(本人がそう言ったかどうかわたし自身は未確認ですが、門田さんが書いてますよね。

あと「自分の患者は誰も死んでいない」については、たとえそれが本当だったとしても軽症者しかみてないならそうなりますよね。

昔、某、国立がんセンターでも糖尿病がちょっとあると手術しないとか、合併症のあるがん患者を一切診ない(内科医がいないから診れない)から、結果的に手術成績がべらぼうによかった時代がありまいた。これについては散々批判を浴び、ついに糖尿病科を国立がんセンターが新設したくらいです。

このように、物事はいろんな角度からしっかりと検証する必要があります。長尾医師はいったいどういう状態の患者を何人みて、どれくらいの治療効果により誰一人死ななかったのかを示すべきでしょう。ご本人の希望通り、医師免許をかけて。

いや、それより、北村弁護士、弁護士なのにあんなこと言っちゃって大丈夫なの???(老婆心ですみません。)

テレビやマスコミや医師のデマとどう向き合うか?

今回、イベルメクチンの件では、医師も「効果がある」と言い切っていて、それをあたかも国が国民に投与しない、「犯罪だ」と論じているものもあり、非常に問題に感じています。

原因となった医師たちには、医道審議会にかかっていただきたいくらいです(免許について一定期間停止するなど決めているところです)。長尾さんらに対しては、再教育が必要でしょう。

一番大事なのは、国民のみなさまが著名人が言っているからとか、医師が言っているからとか、テレビでやっていたから、という理由でうのみにしない賢明さを持つことでしょう。

それがイベルメクチン狂騒曲に対する最も安価で効果的で強烈な治療となることは言うまでもありません。

まとめ

論文撤回されたのは知っていましたが、今回、この件を記事を書くのに調べて、英国の医学生が授業の課題で研究不正を発見した、ということに非常に驚きましたし、非常に質の高い教育をしているな、と感心しました。

日本人は勤勉で努力家で賢明なはずなのに、一体どうしてこんなに差がついたのかについて、まじめに考えるべきでしょう。

長尾和宏医師、門田隆将さん、北村晴男弁護士は査読のある論文を1本も書いた経験がないのでしょう。

専門医になるのに論文はいらない、などと言う人たちがいますが、こういう人たちを見ていると、むしろ必須要件にすべき、という考えになってしまいそうなわたしが怖いです。(医師の皆さん、厳しくなったらわたしではなく長尾和宏さんに文句を言いましょう)

関連記事

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

この記事へのコメントはありません。