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2019年12月に中国の武漢から始まった新型コロナウイルスは、2020年初頭には日本に輸入感染症として入ってきており、何度かの波を超え、すでに1年半以上たちました。ツイッターでは2類から5類にという声が上がっていて、昨年8月には5類への移行が検討されると新聞報道もされたのですが阻止されました。この記事では感染症法の2類と5類の違いを述べてみたいと思います。
尚、2類「相当」、5類「相当」を付けるのが正しいのですが、混乱するので割愛します。
感染症法の分類は7つ
一類から三類は感染力と罹患した場合の重篤性等に基づく総合的か観点から見た危険性の程度に応じて分類しています。
四類は一類~三類感染症以外のもので、主に動物等を介してヒトに感染するもの。
五類は国民や医療関係者への情報提供が必要なもの。
感染症法以外の法律で規定されているものもあり、新型インフルエンザ等感染症では新たに人から人に伝染する能力を有することとなったインフルエンザであって、国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものを扱っています。
指定感染症は既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの(感染症法第6条)をいい、感染症法7条により感染症法が準用されます。指定は政令で行われ、期間は1年、延長は1年以内で最大2年間となります。
新感染症は、ヒトからヒトに伝染する未知の感染症であって、重篤かつ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのあるものをいいます。
各類型で取れる対策
一類
- ・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等
- ・対物:消毒等の措置
- ・交通制限等の措置が可能
二類・三類
- ・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等
- ・対物:消毒等の措置
四類
・動物への措置を含む消毒等の措置
五類
・発生動向調査
新型インフルエンザ等感染症
- ・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等
- ・対物:消毒等の措置
- ・政令により一類感染症相当の措置も可能
- ・感染したおそれのある者に対する健康状態報告要請、外出自粛要請 等
指定感染症
一類から三類感染症に準じた対人、対物措置(延長含め最大2年間に限定)
新感染症
症例積み重ね前
厚生労働大臣が都道府県知事に対し、対応について個別に指導・助言
症例積み重ね後
一類感染症に準じた対応(政令で規定)
感染症法の対象となる感染症
一類感染症
法で指定されるもの
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
政令で指定されるもの
なし
二類感染症
法で指定されるもの
急性灰白髄炎、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV-1に限る)、結核、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1であるものに限る。)
政令で指定されるもの
なし
三類感染症
法で指定されるもの
腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス
政令で指定されるもの
なし
四類感染症
法で指定されるもの
E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)を除く。)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病
政令で指定されるもの
ウエストナイル熱、エキノコックス症、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、コクシジオイデス症、サル痘、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱
五類感染症
法で指定されるもの
インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
政令で指定されるもの
アメーバ赤痢、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く。)、クラミジア肺炎(オウム病を除く。)、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、細菌性髄膜炎、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、先天性風しん症候群、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、へルパンギーナ、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症、流行性角結膜炎、流行性耳下腺炎、淋菌感染症
指定感染症
鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH7N9であるものに限る。)、新型コロナウイルス感染症(2021年2月まで)
新感染症
なし
新型インフルエンザ等感染症
法で指定されるもの
新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(2021年2月から)
政令で指定されるもの
なし
なぜ新型コロナウイルス感染症は指定感染症になったのか
新型コロナウイルスはが2類感染症となったのは以下の理由です。
- ・新興感染症ではあるが未知ではない「既知のウイルス」の感染症である
- ・一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症ではない
- ・感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある
www.cas.go.jp/jp/influenza/corona_taiou3.pdf
令和2年1月28日、当時の安倍総理が政令で指定感染症に定める旨を発令していますので、感染症法7条により感染症法が準用されます。指定は政令で行われ、期間は1年、延長は1年以内で最大2年間となります。指定期間は令和4年1月27日までですが、その後、新型インフルエンザ等感染症に変更されましたので結局期限はなくなっています。
なぜ新型コロナウイルス感染症は指定感染症から新型インフルエンザ等感染症になったのか
2021年2月13日施行の感染症法の改正により新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」へ変更されました。
科学的知見に基づいて2021年2月10日から新型インフルエンザ等感染症になったため、もう期限は今のところありません。
www.mhlw.go.jp/content/10906000/000615582.pdf
要約は上のリンク先にあります。
新型インフルエンザ等感染症は、国民が免疫を獲得していなくて、急速に全国的に蔓延し、国民の生命・健康に重大な被害を及ぼす場合に分類されます。
5類にする目安はどうなっているのか?
感染症と再生産数ですが、デルタ株は1.70-2.30と推定されています。
麻疹 16-21、風疹 7-9、水痘 8-10、ムンプス 11-14、インフルエンザ 2-3、百日咳 16-21と言われています。
飛沫核感染(空気感染)は結核、麻疹、水痘。
再生産係数が最も高い麻疹と百日咳でも5類。
そこで皆さんが知りたいのが、5類にする目安がどうなっているのかという事ですが、これに関しては「ない」のが現状です。
どういう状態になったら前の生活に戻れるのかが全く分からない、というのが一番の国民の不満の原因であり、この辺について専門家会議や厚生労働省はもっと説明すべきではないかと思っています。
日本人は我慢強い国民性ですが、やはり、ワクチンを受けていない若者を中心にデルタ株が一気に増えています。
ただし、5類にするには通常のインフルエンザ並みにならないといけないので、少なくとも致命率が通常型インフルエンザ並みにならないといけない、ってことでしょうか。この辺りは国民的にどこにコンセンサスを持っていくのかという議論になると思います。
厚生労働省のサイトにあるとおり、例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われており、国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人となっています。
これに対して、日本のこれまでの総計938,408人、死亡15,211人(2021年8月21日)となっていて、死亡率としてはインフルエンザの比ではないことがわかるでしょう。
こちらのサイトから世界全体や国々のちがい、ワクチンの接種数など見れます。
わたしは、専門家会議はこういうデータをちゃんと示して、もっと国民の皆様の気持ちがコロナ対策にちゃんと向かうようにすべきだと思います。コロナはただの風邪ではないです、というのをこういう数字を見せたらわかると思います。
医療のひっ迫を招いているものの正体とは?
これは、日本という国の医療のいびつな構造にあります。
入院期間の長さ
たとえば日本で盲腸(虫垂炎)の手術をすると平均入院期間は7日間、米国英国では1日、イタリア2日、フランス3日。
日本人はよく「念のため」といいますが、入院していたらすぐナースコールを押したら誰か来てくれて、念のために長く入院したい、あしたからぴんぴん普段通りの生活が送れるようになってからじゃないと退院したくない国民性なのです。
医療費の安さ
盲腸で比較するとロンドン約120万、イタリア15万~、パリ約80万、アメリカは病院や研修医か専門医かで値段が違うのですが、ニューヨーク約250万円、ロサンゼルス 約200万円、サンフランシスコ約200万円と言う感じです。
これに対して日本では盲腸にかかる入院・治療費は約15万ほどですが、高額療養費制度を利用すれば限度額の約8万(収入により違う)程度となります。この医療費の安さがモラルハザードを招き、ナースコールを押して2分以内にスタッフがこない場合は、なぜ来ないんだとわめき散らし、責任者を呼べだのなんだの余計な負担がかかる、という悪循環を招いています。
特に最近ではコンビニの24時間営業と病院の24時間営業が区別つかない人が増えていると感じています。昼間のスタッフの1/5未満くらいで運営されている17時から午前9時までの病院では看護スタッフは各病棟に1人、2人という場合も多く、また、感染防御に努めないといけないので、防護服の着脱回数も増えており、そういう時間を取られてナースコールに応答するのに遅くなってしまった挙句、患者の機嫌を損ねてわめかれる、を一人がされてしまうと、もう一人がその時間帯その病棟のすべての患者をみないといけません。これでは特に夜勤したいスタッフがいなくなってしまいます。
これに加えて新型コロナに感染した人は、「コロナにかかってお気の毒なんだから丁寧に診ろ」みたいな「特別な病気なんだから優遇されて当然」みたいな意識が働く人が多くて、特にコロナ現場が疲弊して、人材が辞めていく、という悪循環に陥っているように感じます。
ところが、医療機関の正しい利用方法を全く国民に伝えてこなかったのは医療機関側の問題です。
実は海外に比べてべらぼうに高い薬剤料
日本の薬剤の平均価格は欧州の約2倍、アメリカの約1.2倍と言われており、医療機器には、欧米の数倍の保険償還価格となっているものがあります。日本は海外の製薬会社や機器メーカーからすると鴨がネギしょっている状態です。
実は海外に比べてべらぼうに安い人件費
しかし、日本では急性期一般病床の100床に対して医師は6.5人(16:1)、看護師は約40人が基準(7対1とか病床機能により異なります)ですが、アメリカでは医師は72人、看護師は200人を超えており、アメリカでは日本の10倍以上の医師と、5倍の看護師がいることになります。
また、専門医を養成するためのプログラムでも1人の専攻医に指導医が2人つき、しっかりと教育がなされており、公的保険の5%の金額が専攻医の教育に注ぎ込まれています。さらに、米国では保険会社と医師(専門医)が独自に契約して医師に対する支払いは保険会社から直接行われますので、病院側から必要なくても無駄に入院日数を延ばして空床を埋めて経営状態に貢献するように圧力をかけられることもありません。こうしたマンパワーの格差は、アメリカの医療費が高くても納得がいきます。
虫垂炎の手術を1日で退院させて何かあったらアメリカですから訴訟がどんどんおきて改善されるはずですがそうなっていません。これは別に1日で退院して問題ないことを示しています。
急性期からの人材流出に拍車をかけること
マンパワーのコロナ診療できるような急性期からの流出に拍車をかけることとして、日本の大学病院勤務医たちの給与水準は教授クラスでもバイトせずに暮らしていけない程度です。
その上さらに、療養型病床というのが存在し、医師の配置基準も48:1となっています。厚生労働省は療養型を廃止しようとしたのですが、医師会の反対で実現しませんでした。なるだけ手がかからない患者を入院させて、「入院させてくれるだけでありがたい」「病院にいるだけで安心」と家族からありがたがられるので、うまみがありやめられませんよね。
人工呼吸器があっても使える医師がいない
水は低きに流れる。一度療養型病床に行った医師は急性期病棟では使えません。再教育するような余裕もないのが日本の医療現場です。これに関しては看護師も全く同じです。日本は介護と医療をもっとちゃんと分離して、入院期間を減らして、急性期病床がきちんと急性期として機能するような医療制度を目指すべきだったのに、そうしてこなかったため、海外に比較してべらぼうに少ない一日の新規患者数で医療がひっ迫するのです。
人工呼吸器の台数を増やせという議論もありますが、人工呼吸器はただ装着すればいいというものではありません。肺炎の状態により肺の硬さが異なり、肺炎がひどくなって硬くなると、高い圧をかけなければ膨らみませんし、高い圧をかけても膨らまなくなります。人工呼吸器による強制換気と自発呼吸の決定的な違いは、自発呼吸は「胸腔内が陰圧」であることです。つまり、圧が低いところに自然と空気が流れて肺が広がる。肺自体には筋肉がありませんので自分で膨らんだりしぼんだりは出来ません。胸郭が広がって空気が入り、胸郭が狭くなり空気が出ていく。これを陽圧でずっと押し続けるのが人工呼吸器なので、barotrauma/volutraumaとよばれる人工呼吸器関連肺傷害を生じてしまい、最悪の場合人工呼吸器を離脱できないという事になります。
こうした理由で人工呼吸器の管理には熟練が必要なのですが、国民の皆さんが安くてクオリティーの高いという無理筋の医療を求め続けた結果と対比する残念なことして、最近の若者はサラリーマン志向が強くなっています。つまり、医師を職業の一つと捉え、使命感が希薄となっている。それに今回の働き方改革が拍車をかけています。
また、医師側にも問題が大きくあります。
「重症患者や重症リスクの高い方以外は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなれば入院できる体制を整備する」
公式に方針が決定している。地域によっては一般人は酸素を必要な程度では入院できないことになる。もうどうなってしまうのかという気持ちがあるt.co/7eDDah3Rpz— Dr. Tad (@tak53381102) August 2, 2021
こちらのツイートしているアカウントが本当に医師なのかと言う問題はともかく、「こんなになるまで病院に来なかった」とかいって国民を「入院に駆り立てる」とか、エビデンスもないのに早期診断で助かる率が上がるとか(早期診断で生存率が上がるのは一部のがんなど)申し述べ、国民を混乱させる。これがまた曲者で、現場で不安に陥れるので、全くもって医師の生涯教育を強化せねばと思う次第です。
有益な情報と本当の問題点を本音で解説する実名アカウントを是非ご覧ください!って私のことですが(笑)
まとめ
新型コロナはいつになったら5類になるのか
さっきから言っている通り、来年1月27日に指定感染症から外れるので、2類扱いから外れるとおもいきや、新型インフルエンザ等感染症に指定替えされてしまったため、無期限に今の状況が続くこともわかりました。
鍵を握っているのは専門家会議ですが、医師会は医師の利益誘導団体なので、医療がひっ迫するとばかりいい、その理由も説明しません。海外に比べてベッド数が多いのになぜこれくらいの新規感染者数ですぐに医療ひっ迫するのか。国民から遠いところで理解できない議論がなされた末に、ろくな説明もしてもらえず、先日、厚生労働省の幹部が「国民が言うことを聞いてくれない」とぼやいた通り、国民と政府の乖離が大きくなっています。
私が今回指摘しているような、「医療をどのように利用するのか」「どのような医療制度を作るのか」を国民的に議論しないと、いくらOECD統計上、医師の数が先進国並みに増えても、使えない医師ばかり増えていき、皆さんが望むような医療は受けられないでしょう。
それは、今、現実として病床数はあるのに、しかも海外と比べて全然少ない新規患者数で医療ひっ迫が起こるという現実につながっています。
しかし。国民の皆さんは保険料を上げるなとか言いますが、たとえば1円でトリプルエクセレントのダイヤモンドは買えますか?安さと質の良さは両立するものではないのではないでしょうか。この金額しか出したくない、というのが国民の意志ならば、医療側は「ここまでの治療しかできない」となって行くでしょう。ECMOを使用するのには、ECMOが使える高度な技術をもった医師が3人はりつけとなります。器械はあってもECMOが使えない。医師を雇いたくても、若い育ってほしい医師たちはサラリーマン化していて「重症患者をみなくて済む」診療科が人気です。これは、わたしが卒業した1995年にすでにあった傾向で、最近では拍車がかかっています。
かくして集中治療を担える医師が足らない。新型コロナウイルスの致命率は上記の日本の数字からは1.6%という驚くべき数字です。
これに対して、インフルエンザの死亡率(致命率)は多く見積もっても0.02%です。
新型コロナウイルスがいかに致命率が高いかわかりますよね。80倍です。
ちなみに、A大学ではECMOはあるが使える医師がいないのでECMOが必要な状態になったら向いのB大学に搬送しているという話も聞きます。
日本の医療の現状は、「海外に比べて高い薬剤費」で多国籍企業である製薬企業が儲け、「海外に比べて圧倒的に少ないマンパワー」で下手をするとろくな教育もされない医師の生涯教育のもと、個々の医師たちの「眼前の患者を救いたい」という「神に成り上がる」思いで支えられているのが現実です。
しかし。医師は神になってはいけないのです。救うは神の業、我々医師にできることは支援(治療)です。
そして、生涯教育をきちんとしていこうということで、新専門医制度が2018年からスタートしました。これも、政治家など(一番は当時の厚生労働大事の塩崎さん、上昌広さん、相馬市長の立谷秀清さんら)が永田町を巻き込んで介入して、1年延期されました。
立谷さんは「医学部を卒業して国家試験に受かったら医師なので普通に現場に立たせろ」と言っています。臨床研修もろくに要らない、専攻研修なんてもっと要らないという立場です。本当にそうでしょうか?医学部卒業したての医師は何の経験もない状態です。赤ちゃんですよ。
わたしたち医療側は割と政治に翻弄されています。わたしは、最も理路整然と立ち向かい、それらを交通整理する係りを裏側でしています。
医療にはいろんな問題が山ほどあり、混乱した糸をまずはほぐして問題点を探り当て、修復する作業をわたしは日頃、しております。
大学病院の問題についてもわたしはいろいろ指摘して改善しようとしていますが、古く染み付いたものをすぐに変えたりできないので歯がゆい思いをしています。
しかし。こういう状況を「変えないといけない」と思い、「本質の議論」をすべく頑張っている人たちもわたしの周囲にはたくさんいます。
国民の皆さまにわたしたちの思いが届きますように。
100年後の我が国のために、我々は今、立ち止まって落ち着いて考えるべきなのです。
最後に、医学生・研修医諸君。
あつき思いを持て。
君たちが守るべきは「国民」だ。
われわれ医師は国防を司る自衛隊と同じだ。
彼らは銃を手に、我々は薬やメスを手に国民を守る。
誇り高くないものは去れ。
朽ちたリンゴは周囲を朽ちさせる。
もう一度言う。
医師たちよ、誇り高くあれ。
愛する人を守るのと同じように目の前の知らない民を守れ。
それでこそ医師である。
以上
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