みなさんは、医療機関のホームページはすべて「医業広告」に該当するとご存知でしょうか?
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可
能であること(特定性)
の要件を満たすものですので、グーグルなどの広告代理店に金銭的対価を支払ったかどうかについては全く関係ありません。
一般公開されたホームページについてはすべて医業広告規制の対象となります。
今回は、ヒロクリニックの虚偽表示について、遺伝専門医の仲田洋美が美容皮膚科なのに突然「出生前診断の専門家」としてコンテンツマーケティングを美容外科よろしく行っている彼らに挑戦したいと思います。
ちなみに、ヒロクリニックの本体は www.hiro-clinic.or.jp/ こちら。
医療法人の理事長は奥さん(岡浩子医師。内科。1997年 東邦大学医学部卒業. 1997年 慶応大学医学部内科学教室入局。専門医資格なし。)で、旦那さん(岡博史医師。)が積極的にNIPTを展開する事業をしているそうですが、こちらのかたは、営利企業をこのほかにも経営しておられるようです。このかたは、慶應の皮膚科はすぐにやめて、シロノクリニックで修行して開業したそうです。
そういえば慶應医学部卒の美容関係は、ケイマン諸島で脱税して逮捕された松岡孝明さんもいましたね。
わたしは、いまの慶応病院院長と親しいですが、慶應卒も色々ですね。そういえば、東大卒も色々でした!(笑)
さて。問題のヒロクリニックのページですが。
nipt.hiro-clinic.or.jp/nipt/microdeletions/
こちらになります。
全文を以下、コピペしまして、仲田の添削や意見は囲んでおきますので、間違わないようにお願いいたします。
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nipt.hiro-clinic.or.jp/nipt/microdeletions/より引用
全染色体全領域部分欠失・重複疾患とは
東京衛生検査所の次世代シークエンサーを用いたNIPTの検査の結果。Y染色体を除いた全染色体全領域において、欠失および重複が患者さまの300~400人に1人に検出されています。文献によるとこれまでに58種類の欠失・重複が報告されています。東京衛生検査所はこれら58種類に加えて、全領域での欠失・重複を報告しています。この報告は700万塩基以上の欠失・重複があるケースのみ行います。
それと、みなさんは驚くかもしれませんが、最近、BRCA1/2という遺伝性乳がんの遺伝子の病的変異が薬剤が使えるかどうかを調べるために保険収載されたのですが、それを請け負っているのがアメリカのミリアド社でこちらはもう30年以上の歴史のある一流企業なのですが、BRCA遺伝子は両方エクソンが24しかないのに、「エクソン25に〇×の異常が」なんて結果を返してきて、学会発表で話題になっています。ところが、これだって知識のない医者が見ると、「ふーん、そうなのね?」となるだけです。ましてや患者さんは気づきません。
遺伝子検査はそもそも、シークエンサーで行うのはどこがやっても同じなのですが、その結果を人の目で見て補正する(本当にどうなのかを確認する)作業を必ずいたしております。がんゲノムもしかり。大学間をつないで医師たちが毎週会議をしております。東京衛生検査所ではそういうシークエンスを読むのにたけたおかたがいらっしゃるのでしょうか?シークエンスの中からエクソンとイントロンを見分けられますか?それならば、このようなページはおつくりにならないでしょう。わたしの指摘をよみ進めていくと、エクソンとは、という根源が理解されていないことがわかると思います。
全染色体全領域部分欠失疾患は100万塩基から300万塩基程度の欠失でも症状を発症しますが、症例によっては当該遺伝子を含んで700万塩基以上の欠損を伴うこともあります。疾患特有部位の遺伝子欠損を超える大きな欠失があった場合も、該当遺伝子が欠損してるために同様の症状またはより重度の疾患を伴うことが考えられます。そのため、該当欠損部位が疾患特異的部位にふくまれている場合、欠損範囲が大きい場合でも同じ診断名をつけるのが妥当と我々は考えております。微小欠失と呼ぶと誤解を招くため、部分欠失疾患として当HPは記載させていただきます。
twitter.com/tokyo_nipt/status/1297283202579537920
ちなみに、ここには「入会すれば学会発表ができるようになる」と言っていますが、ガイドライン違反行為を発表できるほど学会は甘くありません。実は、昔はO産婦人科がガイドライン違反を発表してマスコミに取り上げさせて宣伝効果を発揮するなどの事件があり、2015年の遺伝カウンセリング学会でわたくし、その演題の時に厳重抗議しまして、そういう演題は発表できない仕組みに改訂いたしました。遺伝カウンセリング学会と人類遺伝学会は兄妹学会ですので、両方の学術集会の演題採択基準が変更となりまして、ガイドライン違反の演題の排除が可能となりました。もうすでに5年もたっています。この方は学会発表最近したことないんですかね?ガイドライン違反していなければ可能ですが、東京衛生検査所は衛生検査所の協会にも入っていないし、「専門家じゃない人がどうやってシークエンサーからでる結果を読んでいるのか」が大変疑問なので、おそらく入会して演題を出しても真実性に問題があるため通らないでしょう。
全染色体全領域部分欠失疾患
通常
全染色体全領域部分重複疾患
700万塩基のうちエクソン領域は約2%含まれており、それは14,000塩基にもなります。
それと、エクソンの平均的塩基数は145塩基ですので、14000塩基のエクソンとなると、100近いエクソンくらいになりますね。ヒトで最大のDMD遺伝子(デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子)が約250万塩基でエクソン数79ですので、ちょっと盛りすぎでしょう。
いずれにしても、全く基礎知識のない人がかいた医学的なように見える文章を、基礎知識が全くない医者たちがろくにチェックもせずに掲載し、基礎知識がもっとない患者さんたちを虚偽表示で「そうなの?」と思い込ませて誘引するとしたら悪質と言わざるを得ないでしょう。
それだけの長さのエクソンがモノソミーまたはトリソミーになると中等度以上の障害を伴うことが予想されます。700万塩基の範囲は大きいと考える方もいるかもしれませんが、羊水穿刺後のマイクロアレイ検査でも500万塩基以下の欠失・重複は製造機器メーカ保証がありません。また、東京衛生検査所では羊水検査のエクソーム解析を行っております。 ご存知の通り羊水穿刺はリスクを伴う検査なのでスクリーニングには向きませんが、本当に微小な変化を捉えるのであれば、この羊水検査+エクソーム解析を行うことをお勧めします。
染色体は、ギリシャ語 χρῶμα (chroma) 「色のついた」という意味のChromo- とギリシャ語の σῶμα (soma) 「体」という意味の -some を掛け合わせてChromosome と命名されました。この染色体が1本になるから1 2 3の数字に対応する mono di tori を接頭詞につけて染色体が1本になる事を モノソミー トリソミー と言います。したがって、部位が割と大きければ重複は 部分トリソミー と表現されることはありますが、エクソンのような「平均的に145塩基」という小さな領域についてモノソミー、トリソミー という表現は致しません。もっと医学をお勉強なさってから文章をお書きになってはいかがでしょうか。遺伝専門医ならわかることも、一般の医師にはわかるものではありません。昔はわかっていなかったことが日進月歩で進んでいるのが遺伝子の世界なので。美容皮膚科に立ち向かえる代物ではありません。したがって、東京衛生検査所でエクソーム解析(全部の遺伝子のエクソンを解析することです)をしたところで、エクソンが何かもわかっていない方々のようですから、いったいどういう検査をしてくれるのか、わたしは不安になります。
なお、エクソン領域の1塩基の変化も捉えることは可能ですが、イントロン領域の変化に伴う疾患や、次世代シークエンサーが読みにくい領域も存在するため、やはりすべての疾患に対応しているわけではありません。イントロン領域の変化に伴う疾患や、次世代シークエンサーが読みにくい領域も存在します。
現在、当クリニックでは東京衛生検査所で検査を行っております。
東京衛生検査所では、2020年6月19日より、5つの全染色体全領域部分欠失疾患に加え、全染色体全領域部分欠損・重複疾患も検査ができるようになりました。
それに伴い、従来のスタンダード(Dプラン)、ミディアムプラン(Cプラン)がパワーアップしました。
以前は5疾患(1p36欠失症候群、4p欠失症候群、5p欠失症候群、15q11.2欠失症候群、22q11.2欠失症候群)の領域のみの欠失を報告していましたが、1、4、5、15、22番染色体の全領域の欠失および重複を報告いたします。
1p36欠失症候群
成長障害、重度精神発達遅滞、難治性てんかんなどの症状
4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群 Wolf-Hirschhorn syndrome)
重度の精神発達の遅れ、成長障害、難治性てんかん、多発形態異常。
5p欠失症候群(猫鳴き症候群 Cri-Du-chat Syndrome)
低出生体重、成長障害、甲高い猫のなき声のような啼泣。顔貌所見や筋緊張低下、精神運動発達の遅れ。
15q11.2欠失症候群(プラダー・ウィリー症候群及びアンジェルマン症候群)
プラダー・ウィリー症候群(Prader-Willi syndrome)
筋緊張低下、色素低下、外性器低形成。
アンジェルマン症候群 (Angelman syndrome)
重度の精神発達の遅れ、てんかん、失調性運動障害、行動異常、睡眠障害、低色素症、特徴的な顔貌。
22q11.2欠失症候群 ディ・ジョージ症候群(DiGeorge症候群)
先天性心疾患、精神発達遅延、特徴的顔貌、免疫低下、口蓋裂・軟口蓋閉鎖不全、鼻声、低カルシウム血症。
証拠保全のため、ヒロクリニックのHPをPDFにしたものを公開しておきます。
全染色体全領域部分欠失・重複疾患とは _ ヒロクリニック
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