新専門医制度|サブスぺシャルティ頓挫中現況報告20210915

医療改革

専門医

前回、専門医機構のサブスぺシャルティがとん挫した問題について、内科学会問題外科学会問題をそれぞれお伝えしました。

専門医制度のサブスぺがとん挫している問題について、専攻医・臨床研修医の知りたい内容を大丈夫な範囲でギリギリ述べています。今回は2021年9月15日の現況と、内科の認定医問題がどうなるかについてお伝えしたいと思います。

2021年3月にペンディングとなったサブスぺ学会の認定に関する状況

これは、今もってなお、全く進んでいません。専攻医の皆さんには大変申し訳ないことに感じています。

現況はやはり、前にも書いた通り、内科認定医しか持っていないのにサブスぺの専門医を持っている人たちをどうするか、という問題が全く解決の見通しが立たなかったことにあります。

内科学会が解決できない問題|専門医持っていない内科のスター医師たち

内科学会はおろかどのサブスぺの専門医も持っていない

たとえば国立がん研究センター東病院の吉野孝之先生を例に挙げてみましょう。(吉野先生に別に何の恨みもありません)

仲田洋美のがん薬物療法専門医を育成している日本臨床腫瘍学会では「理事」となっていて、日本のがんのアカデミアの役員であることがわかると思います。

日本臨床腫瘍学会理事2021

吉野先生は消化管内科長(臨床研究支援部門研究実施管理部長・トランスレーショナルリサーチ推進部⻑ 併任)という大変立派な肩書にあります。

吉野孝之国立がん研究センター東病院

ところが、HPのスクショにある通り、吉野孝之先生は何の認定医、専門医資格もありません。

専門医制度が二階建てになったときにサブスぺ専門医を持っていた人には認定医が大盤振る舞いされたのですが、吉野先生のようにその当時にサブスぺ専門医を持っていなかった人は、認定医すら取れないので、なんの専門医資格も取れないことになります。

吉野先生は何の専門医も持っていないので、がんセンターからはよくいろんな大学の教授を輩出していますが、吉野先生は教授になることができません。文部科学省は大学の臨床科のお教室には「専門医の率を上げるよう」指導を10年以上前からしていて、近頃は教授戦に出るのに臨床医なら基本的領域の専門医を持っていないと応募すらできないからです。

ところが、何が問題かというと吉野先生のようなスター性のあるがんセンターの医師が、専門医を持っていなくても大丈夫、という態度を示して若者を洗脳する可能性があることでしょう。

内科のサブスぺ専門医を持っているが内科認定医止まりの指導医クラス

吉野先生は極端な例なので、あまり専門医制度に影響ないのですが。(とはいえ、臨床腫瘍学会の専門医制度委員会にどの専門医も持っていない医師が名を連ねることについてはわたくしは同意いたしかねます)
問題は、「内科のサブスぺ専門医を持っているのに総合内科専門医を持っていない、つまり内科認定医しか持っていない」指導医クラスの医師たちでしょう。

昔は若いころからどんどん細分化したとっぽい医師になることが正しいキャリアパスと思われていたので、現在、内科の各専門医養成施設たちで指導医クラスは内科を総合的に研鑽するではなく、若いうちからたとえば循環器でカテーテル治療しかやってこなかった、という感じで一部の領域に特化して、どんどん症例を積み重ね、論文を書いてインパクトファクターを稼いだがゆえに教授や認定施設の部長になっているというパターンが殆どでしょう。

今の指導医たちよりもっと上の定年を迎えた医師たちは、内科学を広く研鑽するという態度にあったころなので、というより内科学がそんなに細かく分かれていなかったので大丈夫です。

むしろ、いまの消化器、循環器、糖尿病といった内科の細分化された教授たちが一番ヤバイです。

こうした人たちはめんどくさいことがあってもすでに一国一城のあるじなのでふんぞり返って部下にめんどくさいことを放り投げたら事足りるので、いまさら内科をすべからく勉強しろと言っても無理でしょう。←ほめてはいません!!

というわけで、何が問題かというと、こういう【サブスぺ指導医クラス】の大学教授たちが、サブスぺ学会を機構認定にしたときに、「機構は1階の専門医じゃないとダメ」という決まりなので、認定医から専門医に昇格する必要があるのですが、その昇格のためにさすがに試験を科さないと、ただで付与するわけにいかないでしょ、と言うことなのです。

もしも、ただで内科専門医をくれてやるということになると、昔、サブスぺ専門医が2階建て制度になったときに内科認定医を持っていないサブスぺ専門医たちに内科認定医を「くれてやった」ときに起きた暴動以上の暴動が「専門医たち」から起こることは火を見るよりも明らかで、内科学会は無試験で「現在認定医しか持っていない医師たち」に専門医を付与ということは考えられない。

しかし、こういう「サブスぺ専門医かつ現在認定医しか持っていない医師たち」たちは言及した通り、白い巨塔の教授クラスや民間の大きな病院つまり内科の認定施設の指導医クラスが多いので、部下たちを扇動して蜂起する可能性があります。その数を推測するに、ざっと2千から多くて3千というところかなと思います。全国の白い巨塔が90くらいで各施設で5人として500弱。5~6倍すると大きな民間病院の数かなと思うので。わたしの山勘計算です。(笑)

その数3千と仮定して、部下が10~20人と仮定して、3万~6万が蜂起すると、会員数12万の団体はパニックになります。

しかし。ただで専門医を付与すると、特に舌鋒鋭い「昔の内科専門医」たちが一斉蜂起する。内科学会は専門医試験を科さずに専門医を付与したことは一度もありません。

彼方立てれば此方が立たぬ。どちらに転んでもスズメ蜂の巣を巣をつついたような騒ぎにしかならないでしょう(笑)

そこで、内科学会があみ出したのが、「総合内科専門医という内科専門医と全く間口の同じ昔からある内科専門医をサブスぺシャルティにしてしまい、日本専門医機構認定内科専門医を総合内科専門医の格下にしてしまう」ことで、認定内科医に対して容易に機構専門医を付与する方策だったのだとわたしは考えています(今までの経験から)。

しかし、専門医制度は専門医の優劣をつけるという目的はありません。国民のために国民がわかりやすい、つまり、どういうときにどの専門医を受診したらいいのかをわかりやすく整える、というのが今回の専門医制度改革の大きな考え方です。ゆえに、専門医の上下関係を示すこういう目論見は全部却下されます。

「絶対無理だよ」と言ってきたのに、内科学会がごり押しして通ると思っていたのは、内科学会から専門医機構に理事を出しているからと思われますが、内科学会が母体であっても、専門医機構の理事となれば専門医機構を優位に置いた態度が必要となりますので、たとえば日本医師会から出ている理事が日本医師会の立場で機構を誘導しようとすると内科学会は今まで相当噛みついてきたのに、自分たちの都合がよいように機構を運営してもらうためにW先生を出してるんだなんてとんでもないダブスタよく言えたもんだなと思っています。

ちなみに、わたしはサブスぺシャルティ問題頓挫したので、サブスぺ委員会のメンバー入れ替えろ、トップは当然変えろ、と要求したことあります。

わたしは医師会推薦の理事たちにもその時々で厳しいことを突き付けてきたのに、まさか自分のいる学会だからって内科学会に利益誘導できるはずないでしょ?

一度でもアンフェアなことをやると、わたしの信用はなくなり、何を調整することもできなくなるため、わたしは絶対是々非々の立場は崩せない人材です。

最近少し変化が出てきました

内科学会は大きいのと強いので、一度取った態度をなかなか変えられないようですが。最近になって段々と強硬な態度が変わってきているようです。

やっぱ現実路線を取らないと、無理でしょう。

その証拠に、内科学会雑誌に突然、「更新料を機構更新に必要な1万円を上乗せして1万5千円とする」と突然しれっと掲載しました。
今までは、内科は5千円しかとってなかったのだから会員に対して説明ができない、1万円の内訳を出せ、とかわけのわからないことを言ってきました。

それって、蕎麦屋に入って蕎麦代600円の内訳を出せ、と言ってるようなものですよね。なんで出さないといけないのでしょうか?嫌なら出て行けよ、という話にしかならないです。(笑)

こういう強硬な態度から段々と現実路線をとってきているように感じてはいます。

しかし。来年募集するならこの10月からなのですでに決定していないといけないですが、まったく何も聞こえてこないので、何も決定している事項はありません。

まとめ

なかなかあまり報道のないかなと思い。

ちょっとあまり報告できることも確かにないのですが、皆さんいまどうなっているのか知りたいかなと思い、書いてみました。

大事なことは、ちゃんと決まった際には研修医履歴は必ず反映されるということです。

なので、皆さん、落ち着いてしっかり研鑽していてください。

そういえば、新型コロナの影響で、内科の専門医試験は2年にわたり延期されてしまいました。

twitter.com/R9004IhcyG1nHvr

わたしのツイッターのフォロワーにも内科専門医試験が2回のびてしまった医師がいて。本当に申し訳ないことだと思っていますが、コロナのせいなのと、来年は必ず試験はあると思いますので、しっかり勉強して一発合格に励んでください!

また、サブスぺ専門医で認定医どまりの白い巨塔のおじさんたちに対する策もあみ出してみたのですがまだ内緒です。

みなさん、とにかく医師として落ち着いて自分の能力を上げ、患者に還元できるように、つまり本質を見誤らないように研鑽を続けましょう。おのずと道は開かれます。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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