【医療を斬る】ミネルバてき小室問題1

 

key words : 小室 ディオバン 研究不正 千葉大学 東京大学 日本循環器病学会 日本医学会 日本医学会連合 日本内科学会

********

みなさま,こんばんわ.

 

 

日本医学会前会長の高久先生(このブログの写真の私の隣にいるお方ですっ!!!)が
最近,医療マスコミの取材を受けて語った内容が報道されていました.

小室問題(ディオバン問題)は,2012年に勃発しました.

当時,わたしは,まさか自分に将来関係するなんて
思いもせずに過ごしていました.

わたしはわたしで,がんの世界の診療ガイドラインが,
日本ではエビデンスベースではなく

おじさんの声の大きさで決まっていくことを知り,衝撃を受け

変えなければならない,と決意して,乳癌学会と戦い始めた頃でした.

そして,乳癌学会問題も,ディオバン問題も,
結局は利益相反の問題に帰結していくため

最終的には降りかかってくることとなりました...

なので.まずは最初からどういう経緯かを説明もしたいのですが

とりあえず,日本医学会連合という,
日本内科学会,日本外科学会といった臨床の学会たちや

公衆衛生などといった社会医学系の学会,
基礎医学系の学会を束ねるわれわれの頂点である組織の

役員の選挙が6月18日に迫ってきましたので
わたしとして,言いたいことを書いてみたいと思います.

いつもは,学会の中枢部に向けてだけ発信しているのですが.
ちょっと今回,考えがあって,公開の場で述べたいと思います.

jams.med.or.jp/news/034.pdf

わが国の不正な臨床研究報告に関する日本医学会の見解 
最近,高血圧薬に関するわが国の臨床研究論文が世界的な臨床(医学)雑誌か ら相次ぎ撤回され,
わが国の臨床研究に対する不信が世界的に広がっている. 
この様な状況を見ると,わが国の臨床研究は危機的な状況にあるといっても過 言ではない. 
日本医学会はこの問題を深刻にとらえ,
日本医学会に所属する 118 の分科会 に対して以下の勧告をしたい. 
1)撤回された臨床研究の責任者は所属する学会の役員から辞任する事. 
2)該当する責任者が所属する各学会は,当該会員としての資格を停止する事. 
平成 25 年 11 月 6 日 日本医学会長 髙久史麿 副会長 清水孝雄 久道 茂 門田守人

 

さて.どうでしょうか?

1)に述べられている 撤回された臨床研究 は,
誰が撤回したのかという主体が不明です.

ということは,自主撤回でも強制撤回でも関係なく,
撤回されるような論文を投稿したら,ということなのです.

小室先生はhonest errorと言い続けていて,要するに,
だますつもりはなかったんだからいいでしょ といいたい.

しかし.

動機が正か不正かは,内心の問題なので証明できないし判定もできない,
したがって

そもそもそんなこと問題にしない,だめなものはだめ
というのが国際社会のルールです.

小室先生は,VARTという臨床試験のデーターを出せなかった.もしくは出さなかった.

ところが.世界は全然甘くない.

the Code of Federal Regulations(アメリカの連邦規則)

42 CFR 93.106 – Evidentiary standards.

  • 93.106 Evidentiary standards.

The following evidentiary standards apply to findings made under this part.

(a)Standard of proof. An institutional or HHS finding of research misconduct
must be proved by a preponderance of the evidence.

(b)Burden of proof.

(1) The institution or HHS has the burden of proof for making a finding of research misconduct.
The destruction, absence of, or respondent’s failure to provide research records adequately documenting the questioned research is evidence of research misconduct where the institution or HHS establishes by a preponderance of the evidence that the respondent intentionally, knowingly, or recklessly had research records and destroyed them, had the opportunity to maintain the records but did not do so, or maintained the records and failed to produce them in a timely manner and that the respondent’s conduct constitutes a significant departure from accepted practices of the relevant research community.

 翻訳するとこうなる.

 研究機関またはHHSは研究不正に関する立証責任を負う.
疑義を挟まれた研究がデーターを破棄,紛失したその他
研究者側の責めに帰す事情で適切に開示されなかった場合は,
当該機関またはHHSが調査記録を故意または無謀に破棄した,
記録を維持する機会を有していたがそうしなかった,
または記録を維持していたが提出時機を逸した,
など研究者の行為は研究コミュニティ一般の慣行からの重大な逸脱であるため,
研究不正と認定する.

そして,いつからこの規定が有効になっているのかを見ると.

 ori.hhs.gov/sites/default/files/QandA.reg.6-06.pdf

Q: When did the new regulation become effective?
A: The final rule became effective on June 16, 2005,
30 days after the date of its publication in the Federal Register (70 FR 28370).
For any allegation received on or after June 16, 2005,
the institution must comply with the new regulation.

 ここにある通り,この規定は2005年6月16日から施行されています.

 したがって,ディオバン事件発覚当初である2012年の段階で
国際的なルールは疑義を挟まれた研究者側(小室氏)が
データーを捨てた(もしくは壊れた)と高血圧学会に対して申し述べた時点で,
研究不正が認定されるというものである.

これに対してわが国では小室氏を「黒ではない」と
いつまでも擁護する声があるのです.

昨年,2018年4月,わたしが日本内科学会社員総会で,
小室先生が関東支部から理事に推薦されて出てきたのを

いやです~.なんで11万も会員がいるのに,
そんなグレーなお方を理事にしないといけないのか

と必死で阻止しようとしたのですが.
会場から

うるさい(*`Д´)ノ!!! 
小室先生は黒じゃない(*`Д´)ノ!!! 
とわめくおじさんがいて.

わたしは怯んでしまいました.

しかし.
わが国のルールが国際社会に通用しないことは明白で,
英語で論文を投稿するのであれば海外のこうしたルールに従わねばならない事は
明白だと思います.

我が国にルールがないからと言い訳する前に,
プロフェッショナルオートノミーでルールを策定すればいい事ですよね.

国際的研究者ルールを守り
国際社会の理解も得なければ
我が国の研究の国際的地位が下がり続ける一方である為,
こうした点を真摯に受け止めて改善を求め,
今年2019年の内科学会社員総会では,アメリカの連邦規則を出して
そろそろこうした規定を自主的に作ってもらいたい

と申し述べました.

理事長は,内科学会だけでは難しいので,日本医学会とともに取り組んでいく
と明言されました.

医学の中枢は決して腐ってはいません.

高久先生だって,権力の権化のように言われていますが
わたしが見た高久先生の姿は,
常に良くしていこうと改革をしてきた孤高の戦士のようです.

ま.本当に高久先生が批判されているような権力の権化なら
わたし,近寄りませんって!!

実は.わたし,2回目に高久先生に会ったとき
にゃにゃにゃーんと, 説教 してしまったんですよね.

その考えは間違いである,とはっきり言って(笑)

わたし,誰に対しても同じ態度を取りますので.

だって.めんどくさいじゃないですか?

いうことや態度をころころ変えてたら,
前にその人にどんな態度で接したのかわからなくなるので.

頭悪いんで.わたし.なのでそういう芸当はなくて.

ただひたすら思ったことしか言わない.

なので.もう高久先生に会うこともないだろうと思ってたら
高久先生はご飯食べに連れてってくれたんですよね.
もっと話を聞きたいって.

すごいでしょ?
娘さんよりちょっと若いかもしれないどこの馬の骨ともわからない私に
説教されて
食事に連れていってもっと話を聞かせて,って言えるって.
だって,医学会会長(当時)ですよ??

そうなんですよ.だから.大変尊敬しています.

というわけで.
あの,日本医学会の見解に関する解釈は,わたしも高久先生も同じです.

そもそも,自主撤回したら不正ではなくなるのなら
バレなきゃいいや,という態度がまかり通ることとなりますので
全く好ましくありません.

しかし.

日本医学会の見解は,あくまでも会長副会長の名で出された見解であり

まったく何の強制力もありません.

小室先生が次に分科会から推薦されて医学会連合の理事に出てきたときに
拒否できるようにするためには何が必要なのか?

*医学会連合は医学会の本体です.
一般社団法人です.

こちらの理事がきまると,
日本医学会という日本医師会の中にある組織の理事が自動的に決まります.

したがって,日本医学会の本体は,ミラーである日本医学会連合.

それには,日本医学会連合の定款の変更が必要です.
そして,どのような場合,理事を就任拒否できるのか
解任できるのかなどといった規定を作らねばなりません.

われわれはそうやって襟を正していかねばなりません.
後世のために.

つづく

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

この記事へのコメントはありません。