【医療を斬る】上小阿仁村・診療所処方箋問題

みなさま,こんばんわ.

気になる記事がありましたのでコメントします.

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男性内科医を懲戒処分 上小阿仁村・診療所処方箋問題

  • 19/03/28
  • 記事:秋田魁新報
  • 提供:秋田魁新報
 秋田県上小阿仁村は27日、国保診療所の男性内科医(80)が診察せずに処方箋を発行したとして、減給10分の1(1カ月)とする懲戒処分を発表した。管理責任を問い診療所事務長(村総務課長が兼務)と、同事務長補佐を訓告とした。処分は26日付。

 村によると内科医は先月5~7日、インフルエンザに感染して診察できなかったが、薬を求めた46人に処方箋を発行した。医師法は、医師が診察せずに処方箋を交付してはならないと定める。北秋田保健所は同12日に立ち入り検査し、医師法に不適合だと指摘。村は今月20日、保健所へ改善計画書を提出した。

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これが報道された内容ですが.

この件,懲戒されるほどのことではないと思います. 
まずは,医師法の無診療薬禁止に該当するかどうかということですが 杓子定規的に条文を読めば該当するようにも見受けられるのですが 

無診察治療等の禁止(医師法第 20 条)
医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付しては
ならない。

今回 
①村に一人しかいない医師が自分がインフルエンザで出勤できなかったときに 
②長期的に慢性疾患で診療している人が定期処方の求めに応じるために 
③患者の身体状況(安定していること)を看護師などから報告を受けて 
④処方箋を発行すること 
自体は緊急避難として責められるものではないため,ただちに医師法違反に該当する事例とは考えられないと思います. 
この点,厚生労働省にも確認いたしましたが,同じ考えで 
さらに,自治体に対して大きく問題があるという認識は持っていない,という考えを厚生労働省として伝えている,と聞きました. 

さらに,こちらは運用実務の話ですが 
再診料の留意事項通知に『投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであるが、やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤を投与した場合においても、再診料は算定できるが、外来管理加算は算定できない。また、多忙等を理由に、ウに該当する診療行為を行わず、簡単な症状の確認等を行ったのみで継続処方を行った場合にあって 
は、再診料は算定できるが、外来管理加算は算定できない。』 
というものがあり,やむを得ない場合には直接診療せずに再診料を算定することは認められており,処方箋を発行することも問題ありません. 

こうした取り扱いを実務でしていることからも,この事例がそう大きな問題なのかという認識は持てません.(報道されていることから判断する限りですが) 

懲戒権は村にあるようですが. 
保健所は北秋田市の管轄のようです. 

いずれにせよ,小さい自治体で判断が難しければ 
県や厚生労働省に決まりがどうでどう判断すべきかとか 
質問したりするのが普通ですが 
秋田県庁にも気になって電話してみたのですが 
まったく相談なかったようですね. 
すくなくとも担当者と言って電話に出た人は知らないということでした. 

行政側が法律をわかってなかったり,運用を誤っていたりすることもあるので,この件に関しては,本当に当事者の先生がお気の毒でなりません. 

この上小阿仁村の診療所はこの4年間で4人の医師が赴任してはやめています.
当該医師は4人目で80歳.
80歳でインフルエンザで倒れて高熱発してても
求めに応じて処方箋を発行したんですよ?
それをどうして懲戒しないといけないのか
逆にこの懲戒が不当だと訴えられたら
上小阿仁村は敗訴するのではないでしょうか?
そもそも東北は医師不足だとぎゃーぎゃー言っていますが
こういう環境だと他所から行きたくないですよね?
怖すぎる.
毎年こんなことで騒ぎになるなんて
秋田県ってどうかしてると思います.
プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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