検察庁法改正の問題点について本質だけを検討する

仲田洋美の独り言

検察庁法改正案の何が問題なのか?!

#検察庁法改正案に抗議します というタブがツイッターで飛び交い,トレンド入り.

ところがそのトレンド入りが

このような有様で不正なので消されてしまって
流した側が陰謀論を唱えたり.

文化人放送局MCの政治評論家加藤さんがきゃりーぱみゃぱみゅさんのツイートを
歌手なんだから知らないと思うけど
みたいなことをいって本人から 失礼じゃん といわれてしまったりと
もうわたしのTLまでめちゃくちゃになり(笑)

なんぢゃこりゃ??と
コロナ情報戦線部隊のワタクシでも大変気になりまして.

わたしたち,医師は理系ですが,文系とは一味違う思考回路で本質が大変気になる人たちなので.

カレーのレシピはテキトーで気分次第でスパイスを放り込んで,『洋美ちゃんのカレーは世界一おいしいのよ』なる
食べたことのある人にしかわからないことを堂々とつぶやいて

洋美ちゃんは嫌いでもカレーは好きでしてほしいのー💛 とかオボちゃんのパロディをやってしまいそうな芸風の仲田洋美ではあるが.

中身は大変気になるため,正確に知りたい.
そこで.いろいろつぶやきながらたどり着いた結論をお伝えします!!

www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g20109052.htm

今回の検察庁法改正案はこちらの中にあります.

わたしは お医者さん なのでちょっと法学部で卒業できない程度に5法(憲法民法民事訴訟法刑法刑事訴訟法)をお勉強したからといって
検察官の階級なんてさぱーりわかりません.

この時点で目がチカチカするので.

検察官の階級ってどうなってるの?

www.kensatsu.go.jp/gyoumu/kensatsukan.htm

検事総長は,最高検察庁の長として庁務を掌理し,かつ,全ての検察庁の職員を指揮監督しています。
次長検事は,最高検察庁に属し,検事総長を補佐し,検事総長に事故のあるとき,又は検事総長が欠けたときは,その職務を行います。
検事長は,高等検察庁の長として庁務を掌理し,かつ,その庁並びにその庁の対応する裁判所の管轄区域内にある地方検察庁及び区検察庁の職員を指揮監督しています。
検事正(地方検察庁の長である検事)は,その地方検察庁の庁務を掌理し,かつ,その庁及びその庁の対応する裁判所の管轄区域内にある区検察庁の職員を指揮監督しています。
検事は,最高検察庁・高等検察庁及び地方検察庁などに配置され,捜査・公判及び裁判の執行の指揮監督などの仕事を行っています。
副検事は,区検察庁に配置され,捜査・公判及び裁判の執行の指揮監督などの仕事を行っています。

こんな感じ.

検察庁法の改正部分を新旧対照表で見ましょう.

www.cas.go.jp/jp/houan/200313/siryou4.pdf

www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g20109052.htm

(検察庁法の一部改正) 抜粋

第二十条の二 検察官については、国家公務員法第六十条の二の規定は、適用しない。

第二十二条中「検事総長」を「検察官」に改め、「、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に」を削り、同条に次の七項を加える

検事総長、次長検事又は検事長に対する国家公務員法第八十一条の七の規定の適用については、同条第一項中「に係る定年退職日」とあるのは「が定年に達した日」と、「を当該定年退職日」とあるのは「を当該職員が定年に達した日」と、同項ただし書中「第八十一条の五第一項から第四項までの規定により異動期間(これらの規定により延長された期間を含む。)を延長した職員であつて、定年退職日において管理監督職を占めている職員については、同条第一項又は第二項の規定により当該定年退職日まで当該異動期間を延長した場合であつて、引き続き勤務させることについて人事院の承認を得たときに限るものとし、当該期限は、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して三年を超えることができない」とあるのは「検察庁法第二十二条第五項又は第六項の規定により次長検事又は検事長の官及び職を占めたまま勤務をさせる期限の設定又は延長をした職員であつて、定年に達した日において当該次長検事又は検事長の官及び職を占める職員については、引き続き勤務させることについて内閣の定める場合に限るものとする」と、同項第一号及び同条第三項中「人事院規則で」とあるのは「内閣が」と、同条第二項中「前項の」とあるのは「前項本文の」と、「前項各号」とあるのは「前項第一号」と、「人事院の承認を得て」とあるのは「内閣の定めるところにより」と、同項ただし書中「に係る定年退職日(同項ただし書に規定する職員にあつては、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日)」とあるのは「が定年に達した日(同項ただし書に規定する職員にあつては、年齢が六十三年に達した日)」とし、同条第一項第二号の規定は、適用しない

以下省略

あー.目がちかちかする.

第22条1項

検察官は、年齢が六十五年に達した時に退官するってことですよね.
検事総長以外は63歳であった定年を延長して検察官の定年を65歳に統一するという内容であって,全員が定年延長の利益を得られるので問題はなさそうに考えます.

第22条2項

検事総長、次長検事又は検事長に対する国家公務員(新設)法第八十一条の七の規定の適用については(長すぎるので以下省略)

これは,今回の法改正で新設される「国家公務員法第八十一条の七の規定」を検察官たちには適用せず,検察庁法独自の規定するという読み替え規定となっていますよね.

法律って,厚生労働省所管の法律読んでてもこうやって 読み替え規定 とかが出てきていつも苦労しています(笑)

さらにめんどくさいことに,この条文には

同条(国家公務員法第81条の7)第1項第2号の規定は適用しない という文章があり、適用除外規定にもなっています.

そこで.改正後の国家公務員法第81条の7が気になりますね.

第81条の7 任命権者は,て年に足した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において,次に掲げる事由があると認めるときには,同項の規定にかかわらず,当該職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め,当該職員を当該定年退職日において従事している職務に従事させるため,引き続き勤務させることができる.ただし,第八十一条の五第一項から第四項までの規定により異動期間(これらの規定により延長された期間も含む.)を延長した職員であって,定年退職日において管理監督権を占めている職員については,同条第一項または第二項の規定により当該定年退職日まで当該移動期間を延長した場合であって,引き続き勤務させることについて人事院の承認を得た時に限る者とし,当該期限は,当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して三年を超えることができない

ややこしいですが,管理職以外は1年,管理職はその職に就任して通算で3年しか認められないってことですね.

そしてもう一度検察庁法第22条

上の引用の枠内で赤線を引いている通り,管理監督職 は 次長検事又は検事長の官及び職を占める職員 と読替ます.

さらに 人事院規則で は 内閣が と読替えられます.

要するに,次長検事又は検事長は内閣が定める事由をみたし、閣議決定を経て定年延長が出来るということですよね.

第4項
法務大臣は、次長検事及び検事長が年齢六十三年に達したときは、年齢が六十三年に達した日の翌日に検事に任命するものとする。

第7項
法務大臣は、前二項の規定により次長検事又は検事長の官及び職を占めたまま勤務をさせる期限の設定又は延長をした次長検事又は検事長については、当該期限の翌日に検事に任命するものとする。ただし、第二項の規定により読み替えて適用する国家公務員法第八十一条の七第一項の規定により当該次長検事又は検事長を定年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま引き続き勤務させることとした場合は、この限りでない。

この第7項本文は延長期間終了後は平検事に降格することが,但書では仮に内閣の判断で定年がさらに延長されたとしても次長検事以上にはなれないってことを定めていますよね?

問題になっている黒川さんはどうなるのか?

黒川さんには適応される?されない??
気になりました.
黒川さんは今年2月8日に定年を迎えるはずだったということは63歳(2020年5月11日).

なのに閣議決定で定年が延長され,東京高検検事長.

これは検事総長に次ぐ職位らしく.

8月まで定年が延長された.
そして,今の検事総長稲田氏が7月でその職位に2年となるので,交代?ってことらしいんですよね.

そして黒川さんに検事総長になる道が開かれた.
検事総長は今でも65歳定年なので.そこから1年半は検事総長をやれるってことかな.実現すれば,ってことですよね?
この改正の施行は2022年4月1日なので.
黒川氏が検事総長になったとしても,この改正による定年延長の恩恵にはあずかれない.

*5/12 この件に関するご意見をいただきましたので,こちらに追記します

改正案要綱に次の規定があります。
「この法律は、令和四年四月一日から施行するものとすること。ただし、二及び四は公布の日から施行することとするほか、必要な施行期日を定めるものとすること。」
四は「検討」で、附則に「改正後の検察庁法に規定する年齢が六十三年に達した検察官の任用に関連する制度について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること」とある。
つまり、法改正自体は令和4年施行だが、検事の定年延長に関する「所要の措置」については、公布と同時に先行施行になる可能性が高い。
法律は、国会で成立してから30日以内に公布される。
今、最優先で国会を通せば、この部分だけ8月までには施行できるだろう。
どう考えても、これは黒川のための特別措置だと考えざるを得ない。

それでは,問題の本質は何なのか?

問題があるのかないのかがわからないので.
レクチャーを受けながらゼーゼーいってお勉強しました.

検察は内閣に対して強い独立性を持つべき

検察は行政機関ではあるのですが,内閣の犯罪とかも取り組まないといけないので
独立性を持っていないといけない,というのはわかりますよね.

検察庁法でいろいろ決めてて,この法律の所管は法務省です.

検事総長(各省庁にとって大臣にあたる)の任命は法務大臣が行うそうです.

われわれ医師がその資格をはく奪されるのに医道審議会を経るように
検察官は
www.moj.go.jp/shingi1/shinsakai_tekikakushinsa.html
検察官適格審査会にかけられてその資格をはく奪される.

検察官には
検察官独任制の原則 と 検察官一体の原則
という相反する原則があるようで.

前者は たとえ1年目のペーペーであっても,検察官は一人で権限を行使する.つまり,起訴すしないを決めるのに,上司の決裁は不要である,ということです.

後者は 指揮監督命令に従いなさい ということ.

どうしろというんだ?と頭を抱えたくなりますよね!(笑)

戦前は帝人事件に代表される
『自分たちの気に入らない政権を事件をでっちあげて起訴して倒す』という検察ファッショという状態でした.
この反省に立ち,

独立性 と 恣意性 のバランスを一生懸命戦後の検察は取ってきたようです.

ですので,たとえ法務大臣でも個々の検察官にむかって指令することは出来ず,検事総長を通じてという形になり,個々の検事の独立性は建前上は守られている.

法務省と検察庁の関係性は?

検事総長は法務省人事課が決める.

検察庁は法務省の外局ではあるが,法務省の幹部ポストは検事がとる.

法務省事務次官は一人ですが,全国都道府県に一つある地検の検事正はこの法務省事務次官と同じ等級.

厚生労働省では事務次官は一人ですが,3年くらい前に医務技監という事務次官級のポストを作りました.
でも.まあ,外局ってあったっけ???って感じで.
事務次官クラスが48人+α って考えられないっすね.びっくりです!!

内閣が定年延長することで何が起こる?

これにはちょっと,やっぱ,法曹の人たちの社会の仕組みがわからないといけないので.
いろんな弁護士さんたちに聞き取りをしました.

まずは,弁護士を増やしましたよね?
数を増やすとどうなるかというと,合格水準に到達しなかった人たち,つまりあまり優秀でない人たちが
司法試験に合格し,質が落ちます.
これは,医師の世界でも同じで,18歳人口は減ってるのに,医学部の定員が増加したままなので
昔に比べてあまり優秀ではない層を学生としてお迎えすることになりますよね.

数を増やすと,人間の能力は正規分布していますので,どうしてもどの分野でもそうなります.

そして,今,『仕事がない』弁護士が増えています.
数を増やしても,訴訟自体が増えなかったので,仕事がなくて弁護士になっても暮らせない人たちもたくさんいるようで,一時期たしか,司法試験に受かって,司法修習終了しておきながら,弁護士会に入らない=弁護士にならない人たちが1/4くらいになっていたと思います.

そして,東京大学法学部が偏差値で経済学部に抜かれてしまったのも記憶に新しいと思います.

全国のロースクールは数を減らし,閉校したところ,定員を減らしたところ,様々ですよね.
ゴールドラッシュのようにロースクールがにょきにょきできて,大丈夫かと思ってたら
やっぱり,って感じです.

話を検事に戻しましょう.

検事総長 基本給 1446000
次長検事 1199000
東京高検検事長 1302000
その他の検事長 1199000
検事 1号 1175000
検事 20号 231400
副検事1号 574000
副検事 17号 212200

こんな感じ.

広島(アンリさん)とかちゃんと安倍政権でも検察は機能してるじゃないか?!

という人たちもいるでしょう.

でも.本当にそうでしょうか?

バブルのころは,検察官のなりてがほとんどなくて苦労したそうです,
検察官になっても年俸400万くらいなのに対して,弁護士は2000万近くと恵まれていたのが理由だそうです.

だから.そのころは

この事件やらせてくれないんだったらやめます

が上司が邪魔することに対する対抗策として有効だったそうです.

ところが.今は,弁護士業界がそんな感じなので, やめます と言っても
受け入れ先があるのかとか

検事って民事事件は基本やらないので即戦力としてどうなのよとかいろいろあって

検事の気質も変わってしまったようなんですよね.

そんなときに,内閣のご機嫌をうかがえば定年が延長されるって,どうでしょうか?
年俸2500万円くらいですよね.それで2年間なら5000万.
それが内閣のご機嫌を伺えば手に入るのだとしたら,欲しいのが人情ってもんじゃないでしょうか?

したがって,これは 内閣による贈賄 ととらえることも可能なのではないか?という意見もあります.

もちろん.
検事総長なんかをするおかたは,やめてもちゃんとポストがあるようですが.
普通の次長検事とか,大丈夫っすかね?

とか考えると.

なんかだんだんと,検察の独立性が侵されていくのではないかと思えませんか??

だから,
法曹のかたがたが騒いでいるのは
こういう背景があるようです.

物事は一面ではなく多角的に見ないとわかりません

日本人の皆さん.
いえ.
日本国にお住いのみなさん.

何か一つで ワーワーガーガーピーピー すぐ言うのではなく
おちついて検証してみてください.

すると,コロナに関してもワイドショーのいうことが結構嘘っぱちとか
薄いとかいうことがわかると思います.

大変なご時世ですが
皆さんが日々の生活を落ち着いてできるように
サポートするのがわたしの趣味なので

ちょっと頑張ってみましたー.

しかし.疲れました!

というわけで結論は

確かに黒川さんの定年は延長しないが
本当の問題は

検察官の独立性と恣意性のバランスが崩れることが大変懸念されている

ということで

問題がおこっているのか
おこるのか
おこったのか

われわれ国民は注視していかないといけませんね!

懸念ってかくと たいしたことないじゃん? っておもうあなた!

デフレスパイラルと同じで,一度崩れたバランスはもとに戻らないということを
肝に銘じるべきでしょう.

恋愛と同じですよ.

大事だと思って必死で守ってきたものが
どんどん崩れると
どうせ何やっても無駄よ ってあきらめて
もっとどんどん崩れていく.

好きだった気持ちが取り戻せないように

あの頃の制度 は守れない.

あの頃の制度 にしないようにしないといけないのです.

検察の恣意性と独立性のバランスを.

以上

肩凝った.

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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