リンパ腫の患者さんの主治医だった私.
家庭の医学でいつもお勉強していた彼女は
卒業したての研修医だった私に,難しい質問をぶつけては,頭を抱えさせてくれました.
旦那様が優しく付き添う姿が良く見られました.
予後が良くないタイプのリンパ腫.抗癌剤もあまり効かない.
彼女はそういう内容の質問を,ど~ん,と研修医2か月ぐらいの私にぶつけるんです.
どうやって答えたらいいのか,誰も何も教えてくれないです.
わたしは途方に暮れました.
それでも毎日いろんな話をして過ごしました.
段々,心が通じるようになってきました.
楽器の先生をしながら,子供さんを育てたこと.
旦那様とは単身赴任で一度も一緒に暮らしたことがないこと
など.
いろんな話をしてくれました.
旦那様が言ってました.
先生.僕は今までずっと好きに仕事をしてきて,何も妻にしてやれなかったんです.だから
今から一生懸命頑張りたいんです.
ある日,お偉いさん(教授ではない)に呼ばれました.
その患者さんのことを聞かれました.
というか,いきなり,転院させるように言われました.
以後,外来管理もそちらでするようにと.
訳が分からないので,説明してもらうと.
どうやら,旦那様が,某新聞社に質問する無邪気なはがきを出したそうです.
妻の治療は今の治療しかないのか?それとももっといい治療があるのか?って.
なのに.新聞記者がそれをそのお偉いさんのところに持ってきて,質問したんですね.
どうなんですかって.
たったそれだけですよ????
なんででしょうか????
何も非難もしていない,他に治療はないのかと質問しただけですよ?
当時,インターネットはありませんでした.
わたしは言いました.
この夫婦は結婚して一度も一緒に暮らしたことがありません.旦那さんは,一度でも奥さんのために何かしたいって,それだけなんです.
お願いします.追い出さないでください.
頭はいくらでも下げました.
でも.
だめです.こういう患者はトラブルのもとだから.
そう言われて.研修医のわたしなんて,あっけなく敗北.
患者さんに,転院してって言いに行きました.
患者さんには,冒頭の一言を言われました.
患者さんには,どうしてなのか,わけがわかりません.....
そのまま転院となりました.
理不尽ですよね.医療の世界って.
お偉いさんがそう決めたら,従わねばならないヒエラルキーの中で
個々の医師の純粋さや誠実さは踏みにじられていく.
あれから20年....
#新宿ミネルバクリニック #がん専門医 #在宅 #仲田洋美 #緩和 #セカンドオピニオン
コメント