産婦人科問題症例|ロバートソン転座(均衡型転座)だから大丈夫と言われて産んだら重度知的障害

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第1子に発達障害と知的障害のある40代女性がご夫婦でNIPTに来られました。

本来は学会発表ものくらいの症例なのですが、認定外施設というだけでわたしの発表自体が「学会ガイドラインに違反している施設」ということで受け入れてもらえませんのでブログで発表します。

実は産婦人科で羊水検査をしたのですが。第15番染色体と22番染色体の均衡型転座(ロバートソン転座)という結果だったそうです。45,X◇,der(15;22)(q10;q10)という核型でした。
※ ◇にはXかYが入るのですが、お子さんの性別がわかるので伏せます

都内有名産婦人科ではこういわれました。
”均衡型染色体転座なので問題ない”
そしてご夫婦は初めてのお子さんを出産しました。産婦人科専門医が大丈夫って言っているのだから疑う余地はありませんでした。

しかし。
この均衡型転座には最近になっていろんな報告が出ています。
たとえばこれ

こちらの記事にも書いていますが、15番染色体のq10の隣のq11には、最近では15q11.2 BP1-BP2微小欠失症候群という疾患概念が提唱されておりまして。
産婦人科で通常に行われる羊水検査の染色体検査のゲノム解像度は大きい、つまり粗大な異常しかつかむことができません。

q10と書いてあっても本当にq10より遠位の異常がないかどうかは染色体検査ではたとえ高精度分染法を行っても判らないのです。

この患者さんも検査結果の文字だけをお持ちでした。ラボコープというアメリカの会社の検査結果なので検査結果自体が英語でしたが。
日本の検査会社でしたら核型の写真もつけてくれるのですが。あったとしても私たち臨床遺伝専門医が見ても均衡型転座の切れている部分に微小欠失があるかどうかは誰もわからないと思います。微小欠失は顕微鏡レベルで見えないサイズなので。

しかし。
Rob15つまりロバートソン転座である45,XX,der(15;22)(q10;q10) [こちらは女性の核型です]、または45,XY,der(15;22)(q10;q10)[こちらは男性の核型です ]自体はRobertson転座全体の0.6%しかないもので報告数が少ない中でも発達障害、知的障害などと関係がある可能性を指摘されているのですから、これを妊婦さんにお伝えせずに、ロバートソン転座だから大丈夫、という説明だけでよかったのでしょうか。大変疑問です。

産婦人科専門医が大丈夫って言ったから産んだのに、産んだら重度の発達障害があって大変な思いをしておられるご両親は第2子の妊娠にあたり不安でたまらず、ミネルバクリニックにお越しになりました。

このご夫妻は当院で7Mb(700万塩基)の大きさで染色体の内部の構造の増減を全ての染色体にわたりチェック可能なNIPT(カリオセブン)をお選びになりました。
もちろん、均衡型に関しては検出できないことなどお伝えはしました。

結果は異常がありませんでしたので、ひとまず大きな異常はないということで安心しておられましたが。NIPTで異常がなかったこととほかの異常がないということは同じではないことは重々伝えています。

しかし。
本来、第1子の出産のときに産婦人科専門医が自分の限界を感じていたら、「ロバートソン転座だから大丈夫」なんていうこともなく。
ちゃんと遺伝専門医に相談を受けていたらどうだったのでしょうか???

「このタイプのロバートソン転座には発達障害が報告されています」と言われて、それでも覚悟して産むのと、大丈夫と思って産むのと全く違いますよね。

全国の産婦人科専門医の皆さん。こういう相談が当方に持ち込まれた場合、当方は正直に患者さんにお伝えするようにしています。
その結果、訴訟に発展したとしても堂々とエビデンスを付けて意見を述べるつもりです。

皆さんはこれからもわかっていない「遺伝」をわかったふりをして診療することをお選びになりますか?

それとも臨床遺伝専門医にアドバイスを求めることを患者さんに推奨しますか?
もちろん、患者さんがそれを拒絶したらそれまでで、皆さんに責任は発生しません。

皆さんの段階で 大丈夫 と言って実は大丈夫ではなかった場合は大変だと思いますね。

尚、わたし自身は医療裁判の協力医もした経験がありますが、影響力が大きい為現在は一般の方々からの協力要請に応じていません。しかし、うちの患者さんとなると話は別ですのでご了承ください。
産婦人科専門医の皆さん、狭い世界のギルドで口裏合わせで済んでた時代は終焉を告げていることを理解すべきですよ。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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